「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

コーライトってこんな感じvol.3「歌詞という偉大な存在」

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こんにちは、作曲家のペンギンスです。写真は今年の夏休みに北海道の旭山動物園に行ったときに発見した看板です。自然は不安定らしいです。ぐらぐら。

曲作りの要素=コーライトの役割一覧
1・メロディー、コードを考える(いわゆる狭義の作曲)

2・歌詞を考える(作詞)
3・トラックと呼ばれるビートや様々な楽器の演奏、打ち込み(編曲)
4・歌を歌う(いわゆる「仮歌」)
5・ビジョンを示し、全体の進行を管理し、上記1-4をまとめる(ディレクション)

 
さて、前回はメロディーを作る役割である「トップライナー」についてお話しました。今日は上記一覧の「2・歌詞を考える」役割について説明します。「作詞家」という呼び方が日本では一般的ですが、シンガーが作詞することも非常に多いですし、リリシストいうというかっこいい呼び名もあるし、呼ぶのが難しい役割ですね。ぼやかしていきます(笑)。

 ミュージシャンではない方は驚かれるかもしれませんが、ミュージシャン(特にシンガー以外)はとかく歌詞を軽視しがちです。音楽に興味があってミュージシャンをやっているのであって、言葉やストーリーに興味がない場合も多いんですね。
 でも、商業音楽として歌モノをやっていく上で、歌詞は重要です。正直メロディーよりもサウンドよりも歌詞が大事というケースも多いですし、歌詞が良ければ同じメロディーでも段違いにクオリティが上がって聴こえます。つまりコーライトで歌詞に強い作詞家やシンガーソングライターが提供するすぐれた歌詞というのは、楽曲をプレゼンするにあたって非常に強い武器になるんですね。
 また、ビジネスの話になりますが、仮に楽曲が採用されたとき、「歌詞は別の人に」となるか、はたまた「歌詞も採用でお願いします」と言われるかで、印税の金額が2倍の差になります(作曲分のみか、作詞・作曲分か)。ですから素晴らしい歌詞というのは楽曲の力を端的に2倍にすると言えます。
 ここまで大事な歌詞なのに、作曲家がコンペに曲を提出するときには「仮詞」なんて言葉があるくらいで、仮でちゃちゃっと適当な言葉を乗せてしまうことも多いのではないでしょうか。作詞をする人とコーライトして、ハイレベルな歌詞にすることで、楽曲の魅力はより一層伝わりやすくなるはずです。

追記:詞先について
 歌詞については、メロディーに乗せるものという考え方が一般的ですが、実は歌詞を先に書いて、そこにメロディーを乗せる「詞先(しせん)」という考え方もあります。むしろ、シンガーソングライターなどで歌詞を大切にする人は今も昔も詞先がけっこう多いのではないでしょうか?
 個人的には作詞家が詞先で書いた歌詞を元にコーライトを始めるのは、日本でのコーライトを成功させるためにはかなりすぐれた手法だと思っています。メロディーやコードから音楽的に発想しているとなかなか生まれない柔軟なメロディーが、言葉に導かれてぽん、と産み落とされる。詞先でメロディーを書いているとそんな風に感じます。
 海外がトラックにインスパイアされてカッコいいメロディーを生み出しているなら、日本では歌詞にインスパイアされて泣けるメロディーが生まれればいい・・・少し類型化してしまえば、そんなイメージでしょうか。

コーライトにおける歌詞の重要性についておわかりいただけたでしょうか。次回はいよいよコーライトの華、トラックメーカーについて説明します!

【次回予告】
次回は「コーライトってこんな感じvol.4」です。