「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

コーライトってこんな感じvol.5「仮歌こそはすべて-All you need is great vocal!!-」

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こんにちは、作曲家のペンギンスです。

曲作りの要素=コーライトの役割一覧
1・メロディー、コードを考える(いわゆる狭義の作曲)

2・歌詞を考える(作詞)
3・トラックと呼ばれるビートや様々な楽器の演奏、打ち込み(編曲)
4・歌を歌う(いわゆる「仮歌」)
5・ビジョンを示し、全体の進行を管理し、上記1-4をまとめる(ディレクション)

 前回はトラックメーカーについてお話ししました。今回は4「歌を歌う」についてです。
 コーライトで作る曲は基本的に「歌モノ」と呼ばれるJ-POPや洋楽や、とにかく歌うポピュラーミュージックなので、歌が入って完成ということになります。作曲したメロディー、作詞した歌詞、いずれも歌われて完成です。なので、「仮」歌という言い方をしていますが本当はあまり良くないですね。仮歌こそはすべて、All you need is great vocal! です。
 コーライトでの仮歌は大きく分けて2タイプで、「コーライトメンバーの中に自分で歌える人がいて、その人が歌うパターン」と「外部の知り合いのシンガーにギャラを払って歌ってもらうパターン」があります。どちらが良いということはないですが、前者のメリットとしてはコーライトメンバーなので歌の細かいニュアンスや、どんな歌が求められているかのビジョンについて深く理解して歌ってもらえるというのはあると思います。後者については案件に合ったレベルの高いシンガーさんを選んで発注できるというのがメリットですね。
 さて、作曲家を2タイプに分けると「自分で歌える作曲家(シンガーソングライター出身)」と「自分で歌えない作曲家(ミュージシャン、DTMer出身)」に分けられると思います。このうち前者はボーカルの重要性を自然に理解している場合が多いのですが、後者の「歌えないタイプの作曲家」はどうしてもどこかボーカルの重要性を理解しきれていないケースがあります。「シンセメロじゃだめなの?」「歌のピッチ修正ってそこまで必要なの?」等々。今回は仮歌の重要性という観点からこれらの質問に答えていきたいと思います。

 「シンセメロじゃだめなの?」
 スーパーのBGMのようなシンセメロでの提出はディレクターから特段の指示がある場合か、実績ある作家があえての高等テクでシンセメロにするくらいで、基本的に今シンセメロのほうが望ましい案件というのは絶滅危惧種かと思います。歌ってもらいましょう。

 「歌のピッチ修正ってそこまで必要なの?」
 コンペに出す楽曲はアーティストの作品ではなく、クライアントへの「説明資料」です。なので、メロディーを説明するにあたってピッチが正確であることは絶対条件です。元々の歌がうまいことは勿論大切ですが、さらにしっかりとピッチ修正ソフトウェアで修正して仕上げることは、メロディーに対する責任の一部と言えると思います。さらに最近ではAuto-Tuneなどを使った「修正のセンス、エディットの個性」のようなレベルまで求められ始めているようで、つくづく奥が深い分野だなと思います。

 いかがでしたでしょうか。いくらいい曲であっても、いい歌詞であっても、イマイチな歌では伝わりません。歌える人とコーライトするか、日頃からうまい人をネットやライブハウスで探したり、紹介してもらったりして、自分の曲を素晴らしいボーカルで提案できるとよいですね。

【次回予告】
次回は「コーライトってこんな感じvol.6」です。