「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

ポップス宗教戦争-ギターで曲作るやつ vs 鍵盤で曲作るやつ

 こんばんは、作曲家のペンギンスです。今日は表題の通りバトルです。ポップス界における永遠のライバル、ギタリストとキーボーディストについて話します(笑)。もちろんそれをコーライトという観点からも見ていきたいなと思います。
 音楽にとって楽器は道具にすぎません。どんな道具を使うとしても、いい音楽、いい演奏になればそれでいいというのが大前提です。とはいえ、使う道具が結果を変えてしまうこともしばしばです。曲を書くとき、そしてもちろんコーライトするとき、使う道具(楽器)がギターか、あるいはキーボード(鍵盤)かで、だいぶつくり方が異なりますし、できあがる曲の傾向も変わってくるんですね。
 僕は子供のころ習ったピアノから始まり、根っからの鍵盤人間なので、どうしても鍵盤楽器を贔屓目に見てしまうのですが、贔屓目抜きにしても鍵盤楽器でポップスをやる上での長所はたくさんあります。いっぽうで短所もあります。それはギターもまた然り、です。それをまとめたエントリです。

・鍵盤楽器でポップスを作る長所

1.カバーしている音域が広いので、様々な楽器を使ったアレンジを鍵盤の上で全て確認できる。
この「俯瞰性」というのは鍵盤楽器の大きな特色のひとつです。さすがピアノは近代西洋を代表する楽器だけあって、非常に論理的、全体的に構築されたシステムだと思います。

2.歌のメロディーや楽器のオブリなど、「フレーズ的なもの」を自由に演奏できる。
音階全体を自由に行き来できるというのは意外と楽器にとって当たり前ではなくて、弦楽器や管楽器は都合のよい音階(スケール)や調(キー)がある程度決まっています。ただピアノはそこがかなり制約がゆるいため、どうとでも自由にフレーズを演奏できる利点はあると思います。

3.DAW(Digital Audio Workstation、いわゆる音楽制作ソフト)は鍵盤によるデータ入力を前提としていることが多いため、DAWとシームレスに連携できる。
これは近年決定的なメリットなのではないでしょうか。MIDIデータなどを入力する際には基本的に鍵盤デバイスからの入力をするため、鍵盤奏者としてはいつも弾いているとおりに演奏すればそれがそのままMIDIデータとしてDAWに入力される、これは地味に大きな便利さがあると思います。

・鍵盤楽器でポップスを作る短所

1.メロディーを自由に演奏できてしまうため、逆に自分の声で歌わなくてもメロディーらしきものを作れてしまう。
鍵盤だけで育つといわゆる「鍵盤メロ」と酷評されるような、歌っていて気持ち良くない人工的なメロディーを作ってしまいがち。鍵盤奏者はギタリスト以上に、意識して歌心を身につけていく必要があると思っています。

2.鍵盤の押さえ方でどうとでも複雑なハーモニーなどを作れるため、シンプルな楽しさが基本のポップスなのに複雑なコード進行などを使ってしまいがち。
鍵盤楽器奏者の多くがクラシックやジャズなどをルーツに持っているので、それらのジャンルにとっては自然の摂理なハーモニーであっても、ポップスではソフィスティケート過ぎることも多々。

3.かなり個人的な意見ですが・・・演奏方法が「鍵盤を上から押す」という一方向の演奏で、ギターのアップストロークとダウンストロークのような双方向性がない。
双方向性がないということは往復運動がないということで、すなわち反復によるリズム感の発生を感じる機会が少ない。したがってフレーズやコードといった音程感覚は研ぎ澄まされても、リズム感が置いてきぼりになる鍵盤奏者は多いと思います。

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・ギターでポップスを作る長所

1.弾きながら歌わないとメロディーが作れないので、自然と歌モノらしいメロディーができる。
これは鍵盤奏者的には一番羨ましい点ですね。鍵盤は右手でメロディー、左手で和音といったかたちで一人でメロディーとコードを演奏できてしまいますが(ギターも出来ないわけではないですが)、ギターの場合演奏は演奏で、メロディーは歌いながら作るスタイルが普通なんじゃないかと思います。

2.シンプルなコードでシンプルなポップスが作りやすい。
ギターの場合コードを奏でてそこにメロディーを歌って載せるという2軸がわかりやすいので(鍵盤の場合コードとメロディーを両方演奏するため渾然一体としている)、シンプルなコードでかっこいいカッティング、そこにメロディーがセンスよくのれば場合によってはそれだけでアレンジが成り立つほど説得力があります。また、これは逆説的な話なのですが、シンプルなコードで何故単調にならないかという理由のひとつとして、個人的にはバレーコードとオープンコードの違いで同じコードでも違うボイシングで鳴らせることとか、開放弦が鳴っちゃう瞬間に出るギターくささとか、そういった「意図にないギターの制約がもたらすかっこよさ」というのがうまく活かせると非常にギターらしい名曲ができるなという印象を持っています。

3.いわゆるBPM180くらいの、リズム感のあるアップテンポなロック。これを作るのはギターの独壇場だと思っています。
鍵盤は先ほど書いたように往復運動ではないので、1回の打鍵で1音しか鳴らせないため、BPM160を超えるようなアップテンポなバッキングというのは単調にならないためにはかなり工夫が必要です。そこいくとギターは往復運動でカッティングするプレイが構造的に可能なので、アップテンポなリズム感を作り出すことができるのが素直に羨ましいです。

・ギターでポップスを作る短所

どんな分野、どんな楽器にも達人はいるのでそういった方は例外なのですが・・・基本的にポップスのギターを弾く人は、コーダル(コードを基調にした音楽の捉え方)な人が多いなというあくまで個人的な印象を持っています。むろん、ジャズギターとかクラシックギターだったらむしろ逆だとは思うのですが、ギターは先ほど書いたようにコード弾きながらメロディーを歌うという形で、コードの独立性が強い楽器だと思うので、コードという枠組みにともすると縛られてしまうのかもしれないと見ていて思うときがあるのは事実です。いっぽう鍵盤楽器は、もちろんコードも弾けるのですが、個々の音の連続、フレーズを基調にした音楽の捉え方(コーダルに対してモード的、という意味で「モーダル」といったりします)をすることが多いので、「鍵盤メロ」になるリスクはありつつも、音楽の「横の流れ」を意識することは鍵盤のほうがやりやすいのかな、と思ったりしています。

なんだか数日間ためこんでから一気に書いたらまとまんないや。
タイトルにも書いた通りこれは宗教戦争みたいなもんで、主観しかないエントリなので、いろいろなご意見があるとは思います。
ギターとキーボードでコーライトしていい曲作れたらいいですね!(適当

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