「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

数を打つって素晴らしい vol.3「数を打つから、クリエイティブになれる」

f:id:PENGUINS_PROJECT:20170805161614j:plainこんにちは、作曲家のペンギンスです。写真は今日の不忍池です。暑かったです。

 今日は数撃ちゃシリーズ(適当)最終回です。「質と量」問題は奥が深いですね・・・ブログ3件も書けちゃいました。
 これまで、「量は嘘をつかないよ」「量は質に転化するよ」っていう話をしてきました。今日は「量はクリエイティビティになるよ」っていう話をします。

 質というのが「完璧にどれだけ近いか」という絶対値を上げる問題だとすると、クリエイティビティというのは「どれだけ鮮やかな方向性を示せるか」というベクトルの精度問題です。前回話したように、量によってPDCAサイクルがまわると人はレベルアップしていくわけですが、これだけではもったいないんですね。量によって人は「失敗ができるようになる」んです。どういうことか?

 例えば1曲しか作らないと、その1曲は絶対失敗できません。だから一番うまくいきそうな、手堅そうなものを作るしかありません。「バットを短く持つ」というやつです。でも10曲作れば、その中の数曲が当たればいい、と考えられる。だから色々なタイプの曲を作ることができます。中には「まず採用されなさそうだけど、個人的にはすごくクライアントに似合うと思っている、トガった曲」なんかも混ぜ込めます。このように量が少ないときより、量が多いときのほうが、失敗が許容される環境になります。そうするとチャレンジしやすくなります。多様性が生まれます。結果、クリエイティブなものが生まれやすくなるのです。

 プレッシャーがかかったときほど、人はバットを短く持つようになります。当てなきゃ、当てなきゃ。でもクライアントは「正しい曲」を求めているのではなくて「ワクワクする曲」を求めている場合がほとんどです。バットを短く持てば持つほど、ワクワクは減ります。だから真面目に当てなきゃと思うほど当たらなくなる。失敗できないからこの1曲に賭ける。悪循環です。そうじゃなくて、当たんなくていいからくらいの気持ちで、まず自分をワクワクさせる。ワクワクするから、作っちゃう。たくさん作っちゃう。そうするとクリエイティブな曲が生まれやすくなります。自分の経験からいっても、こういう好循環にハマってできた曲は、たとえその場ではうまくいかなかったとしても、別の案件など思わぬところでバッチリと採用される印象です。

 量を作るというのは確かに時間的&肉体的にしんどいです。でも一番しんどいのは「ヒット曲が出ない」「いい曲が書けない」という精神的なしんどさです。だったら時間と体力を惜しみなく使って、いい曲ができるまでたくさん書けばいい。クリエイティブな曲ができればまた元気を取り戻し、次の1曲に向かうことができます。数を打つからクリエイティブになれるし、明日に向かって進めるのです。

【次回予告】
次回は「コーライトってこんな感じ vol.1」です。