「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

コーライトで役立った会社員生活の経験vol.3「顧客志向の考え方」

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こんにちは、作曲家のペンギンスです。顧客顧客と言いながら写真フォルダを漁っていたらヤギが草食ってる写真が出てきました。これだ。

 さて、会社員生活がコーライトに役立ったよ話も最終回です。

1.問題解決志向のアプローチ
2.プロジェクトマネジメント
3.顧客志向の考え方

 今回は3番「顧客志向の考え方」についてお話しします。

3.顧客志向の考え方

 作曲家にとって難しい問題のひとつに「顧客は誰なのか?」という問題があります。直接的には曲を選んでくれるディレクターやプロデューサーですが、本質的にはその曲をいいと思ってくれるリスナー、アーティストのファンの皆様ですよね。個人的にはどちらを軽視するのも良くないと思っていて、作曲家→意志決定する人→リスナー、という一列が綺麗にイメージできていることが大事だと思っています。
 さて、誰が顧客であったにせよ、作曲家はその顧客を満足させる(感動させる、泣かせる、惚れさせる)ことが仕事の目的です。しかし、往々にして作曲家というのは誰が顧客なのかを忘れがちです。もっと言えば「全てはお客さんが喜んでくれるためにやるんだ」という「顧客志向の考え方」を忘れがちなように思います。
 クリエイター的な仕事はたいてい、クリエイターのこだわりと受け手側の満足どちらを優先すべきか、みたいな終わりのない議論に巻き込まれがちですが、これはひとえに「意識では顧客志向だけど、無意識では自分志向」というケースが多いからではないかなと思います。クリエイター的な仕事は「好きが高じて始めた」という人が圧倒的多数なので、最初に自分志向が優先しがちなんですよね。
 でも僕はありがたいことに自社製品を開発している会社に勤めつつ、なおかつ顧客と接するタイプの(客先に出るタイプの)部署にいましたので、「製品作った奴の熱い思いは聞いているが、お客さんには全然伝わってないぜ」とか「お客さんが本当に欲しいものは何なのかを、現場にいない開発に伝えるって難しいぜ」みたいな場面に多数遭遇しました。
 そうすると曲を作ってるときにその場面が蘇るんですね。「もしかして、俺が自信作だと思っているこの曲、ディレクターからしてみたら甚だ見当違いだったりするのかな?他の考えはないかな?自分ではいい曲と思っているけど、最初に先入観抜きで聴いたら、リスナーはどう思うのかな?」と考える習慣につながりました。そうやって曲を作りながら常に「最終的な現場(カーステや有線で流れる、コンサートで歌われる、カラオケでリクエストされる)で音楽が流れている様」をイメージする癖が、曲をレベルアップさせてくれたとおもっています。
 これはコーライトでも当然役に立ちます。むしろコーライトをする理由の最大のひとつが「コーライトメンバーに「1人めの顧客」になってもらえるから」というのもあります。自分が作ったメロディー、自分が書いた歌詞。それを最初に聴いたり読んだりするのはコーライトメンバーですよね。そこでどういうリアクションをもらえるかで、顧客を疑似体験できる、というのはコーライトで楽曲のクオリティが上がる最大の要因なのかもしれないと思います。
 結局コーライトは音楽を作るという作業を孤独から解放してくれたという意味合いが僕にとって大きいのかもしれません。人と作っていれば客観的になれるし、締め切りだって守るし。商業音楽を作るのに向いている手法だなぁって思います。

【次回予告】
次回は「コーライトでぶつかった最初の壁とは?」です。