こんにちは、作曲家のペンギンスです。写真はこの前ヒット祈願に行ってきた箱根神社です。
欧米では特に言うまでもなく音楽制作の手法の「フツー」であり続けてたコーライトですが、日本ではやっぱりまだまだ「最近登場した新しいやり方」という感じの受け止め方が多そうです。欧米からやってきた新しいもの(で、強そうなものw)をよく「黒船」って呼びますが、コーライトもまだまだ黒船なのかなーと思うときが多いです。
欧米のコーライトが成り立ってる背景にはダンスミュージックの隆盛とそれに伴うトラックメーカーの確固たる地位があって、トップライナーはトップライナーで基本歌が歌えて自分で歌いながら歌詞+メロの一体化した「トップライン」を作っていくという制作手法があると思うんですね。曲作りの順番も完全にトラック先行で、トラックメーカーがプロデューサーであり、コーライトを主導するというのが確立されていると思うんです。
ところがこれを日本に持ってくると、正直まだまだシンセメロという形で、鍵盤で弾いてメロディーを作ってから、アレンジャーがアレンジして、最後に仮歌さんが登場して歌を入れるという段取りなわけです。前提としてJ-POP市場でターゲットにするようなアーティストだと(特にアイドルやアニソンでは)まだまだバンドサウンド、歌謡曲サウンドが健在で、つまりどうなるかっていうとトラックメーカーがやることがいわゆる編曲=アレンジャーの仕事なんですよね。なのでどうしてもシンプルでカッコいいビート一発ではいOK!という感じでもなく、めちゃくちゃ細かいアレンジをする作業が発生します。採用されればアレンジ料をもらえるから良いものの、トップライナー&ディレクションでやらせてもらうことが多い僕としては正直「日本でトラックメーカーでやるのって大変そうだなぁ。てかこれトラックメイクというよりアレンジだよなぁ。トップライナーはめげずにメロディーを作り続ければいいけど、アレンジ全部やって採用されないのが何十曲も続いたら心折れるよなぁ」と心配するわけです。
だけどポジティブに考えると、これって海外から新しい文化がやってきた時に必ず起きたことなんですよね。
古くははっぴぃえんどの4人が日本語でロックをやるという革命を起こしたときに「日本語はロックに馴染まない」というよくある「日本にxxは馴染むのか論争」が起きたわけです。今では信じられないことですが日本語の構造とロックのリズムを理由にこれでは日本語でロックなどできないという意見もかなりあったようなんですね。ですがみなさんご存知の通り、日本っぽいロックのサウンドが確立され、そこにどう歌詞を乗せるとかっこいいのかも偉大な先達によりうまいやり方が発見され、今では当たり前に日本人が日本語でロックすることができている。さらに進んで日本人がラップをやる、DJをやる、ダンスをするということも、全部日本人なりのやり方が発明されて日本に浸透してきたと思うんですね。
僕はコーライトも今その過渡期にあるような気がしています。今は欧米のコーライティングが輸入されて広まっている途中なので、どうしても「J-POPはメロディーが大事だからコーライトは馴染まない」「アニメタイアップはアレンジが細かく作り込まれていないと採用されないからコーライトではトラックメーカーの負担が大きすぎる」といった事態が時々起きてるなーと思います。
でもこれも全部、問題解決されていくと信じています。なにせ今まで数え切れないほどの輸入ものがこの国へやってきてジャパニーズ流に馴染んできたんです。なので僕はジャパニーズ・コーライトを確立したいと思っています。いつかはっぴぃえんどの日本語ロック論争と同じで「日本人がコーライトに向いてないとか言われてた時あったよねーwwwwww懐かしいwww」ってなる日がくるといいなと思っています。
【次回予告】
次回は「トップライナーひな壇芸人説」です。