「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

ワークスウェイの話をしようか -vol.5:ブレイクスルー

 こんばんは、作曲家のペンギンスです。
 前職の行動規範「ワークスウェイ」とコーライト、というテーマで5回にわけて語ってきたシリーズですが今回で最終回です。今回は「ブレイクスルー」・・・難しいですね・・・。ひとことでいうと「改善ではなく、非連続で破壊的な成長を実現しろ」という感じでしょうか。だめだ余計ややこしいですね。まぁなんとか説明してみます。
 とはいえブレイクスルーという言葉って、皆さんweb上やらマスコミで多少なりとも耳にしたことがあるのではないでしょうか。そう、「画期的な製造手法により大幅なコストダウンを成し遂げた」「若手の発想を活かすことで画期的な新商品がヒットした」といったニュースのときに「これはブレイクスルーだ」なんて言い方を聞いたことがあるのではないかと思います。
 お気付きのかたもいると思いますが、どちらの例文にも「画期的」という言葉が含まれていますよね。僕はこの「画期的」という言葉がブレイクスルーの和訳として相応しいのではないかと思っています。「期を画す」、つまりある時代(「期」)に終止符を打ち次の時代との区切りをつける(「画す」)、そんな出来事がブレイクスルーなんだと思います。
 そしてブレイクスルーの対義語にあたるものが「改善」だと僕は思っています。一見すると「ものごとをよくしたんだから、改善でしょ?」と思われるかもしれません。でもここには大きな違いがあります。「改善」というのは例えば「ボーカルエディット作業がこれまでMelodyneで3時間かかっていたけど、作業に慣れることで2時間でできるようになった」みたいな話です。これに対して「ブレイクスルー」というのは「Auto-Tuneで自動でピッチ修正するようにしたらボーカルエディットが不要になった」とか「すごいうまい仮歌さん見つけたからほとんど修正しなくてよくなった」みたいな話だったりします。何が違うかというと僕が思うに「改善」というのは過去からの連続であるのに対して、「ブレイクスルー」は過去から積み重ねてきたやり方を否定したり無意味にしたりするような、非連続なものなんですね。
 そして大抵の場合、改善で成し遂げられることは「何割」のレベルの成果です。時間が2割短縮できた。作る曲数を2割増やせた。などなど。それに対してブレイクスルーで成し遂げられることは「何倍」のレベル、あるいはそもそも数値比較できない成果です。年間の採用曲数が3倍になった。あるいは今まで採用されなかったアーティストに、初めて採用された、など。
 コーライトの利点は異なる人間が集まって曲を作ることで、ひとりでコツコツと積み重ねていくだけでは出来ない成長を1曲の中で実現できることだなと思います。そこには前回作った曲との断絶があり、すなわち飛躍があります。新しいメンバーとコーライトするたびに、不連続な成長をとげることができます。そういう意味ではコーライトというのはまさに音楽でブレイクスルーを実現するための最適な手法といえるでしょう。

5回にわたってワークスウェイのお話をしてきて、改めてすぐれた行動規範だなと思いました。どんな分野においても黄金律といえるものに出会えたことは幸せです。出会えたのに小さな成果で終わってしまっては申し訳ないので、もっと僕自身がブレイクスルーを成し遂げていきたいなと思います。

【次回予告】
次回は「なんのあてもなくドラムについて語る夜」です。

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