「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

「コーライティングの教科書」紹介 vol.2 「いま、日本で「あえてコーライティング」することの価値」

 こんばんは、作曲家のペンギンスです。眠れない夜はブログを書きます。というかvol.1書いたあと3日も空けてしまってすいません。
 書籍「コーライティングの教科書」を紹介するシリーズですが、実際の書籍の中身はぜひAmazonで買って読んでいただくとして(笑)、むしろせっかく本を紹介するのだから、その本の中身を実践することでどんな価値が生み出されるのかという話をしたほうがいい気がしています。タイトルに「いま、日本で「あえてコーライティング」することの価値」という風につけました。その意図するところをお話ししたいと思います。

 欧米において、「コーライティングすること自体」に実はそれほど価値はないように見えます。Writingといえば普通Co-WritingだからいちいちCoなんて付けないよ、というくらいで、コーライティングすることが普通のことなので、していても何も注目されないんですね。
 ところが、日本の現状は違います。数年前よりはミュージシャン人口に膾炙してきましたが、いまだに飲み会とかで「コーライトしてます」と言うと少しざわつく感じがあります(笑)。素晴らしいもの、面白いものが広まってない、という意味では残念なことなのですが、逆に言えば今はコーライトと言うだけで人がざわつく=注目してくれるチャンスタイムです(笑)。(あと1,2年で終わるはず!)僕の人生経験上、「同じチャンスタイムなら踊らにゃソンソン」です。それだけでコーライティングの日本ならではの価値が、今はまだ出るのではないでしょうか。

 加えて、コーライティングって我々日本のクリエイターの弱点、良くないところを見事に補ってくれるシステムだと思うんですね。書籍紹介なんで少しだけ中身に触れつつ話せば、「ちゃんとケンカしろ」と書かれている通り、人格を否定せずに曲の悪いところだけはっきり意見するという作法とか、非常に素晴らしいと思います。音楽は心が現れたものだ、と考えることは一見素晴らしいのだけど、逆にいうと音楽を否定することで人間まで否定してしまう暴力的な側面もある。コーライティングという形で、1曲のクリエイティビティが個人の魂や心に依存しなくなることは、曲が独立したアートでありエンタメであるということを現実化してくれるのではないかと思います。

 さらに言えばこれも書かれている通り「コーライティングは学びの宝庫」です。僕自身もちろんそうですが、ずっと1人で音楽を作っていると、知らず知らずに自分の音楽の作り方が当然だと思うようになるんですね。機材の使い方しかり、制作のペースしかり、メロディーセンスだって自己流になります。日本ではずっとこの自己流が個性の源泉であるとほとんど無意識的に考えられてきましたが、半分は合っているけど半分は違うと思います。自己流が個性の源泉であると同時に、限界も生み出してしまう。だけどコーライティングで他者とともに創作することで、自分の個性だけでなく他者の個性や力量を学び取ることができる。これで限界突破できます。時には「なんでそんなむちゃくちゃなプラグインの使い方してんだよ」「どうしてそのメロディーが良いとか思えるんだよ」とイライラすることもあります(笑)。正直ぼくもキャンプとかでしょっちゅうイライラしていると思います(ごめんなさい)。でも振り返るとその「他者のクリエイティブな作業を見たときの苛立ち」ってすごく成長のチャンスなんですよね。「受け入れがたいものをそれでも共同作業で受け入れたときの成長」って、他のやり方では得られないんじゃないかなと思います。

 この書籍「コーライティングの教科書」にはそんなドラマが生まれる現場であるコーライティングキャンプの模様を実況中継した章や、web上でのコーライトで1曲が完成するまでをドキュメンタリー風に記録した章もあります。いずれも日本での僕ら駆け出し作曲家の風景です。リアルな日本でのコーライティングの風景を読んで感じ取っていただけたら幸いです。

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