こんにちは、作曲家のペンギンスです。むちゃくちゃいい天気でテンションがあがっています。久々のブログ更新です。そして久々にコーライト論的なことをちゃんと書きます笑
少し前にちょっと流行ったビジネス書で、山口周氏の「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」という本があります。いかにも新書という感じの商業的なタイトルですが、割と面白かったです。
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/07/19
- メディア: 新書
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この本の中で著者は、経営に必要なものを3タイプに分類しています。ざっくりいうとそれが「アート(感覚)」「クラフト(経験)」「サイエンス(論理)」なんですね。で、コーライトでもこの3つがうまく合わさるといい曲ができるなー、というのが今日言いたいことです。
これ多分、要約しちゃうと「へー」で終わる話なんですけど、具体的なコーライトの風景を書いてみると、結構「あるあるw」と思ってくれる作家さんも多いのではないかと思います。
A(アート)さん:シンガーソングライター、DAWは苦手、ギターは弾けるけど感覚で押さえてるので音楽理論とかは一切知らない、歌はかっこいい、歌詞もかっこいい。
C(クラフト)さん:音楽制作会社で業務委託で働いてる、けっこう業界歴は長い、DAWは細かい機能まで使い倒してる、ピアノとギターは一応弾ける、理論的なことは一応知ってる、今回はトラックメーカーとして参加。
S(サイエンス)さん:ていうか俺
この3名でのコーライト、という架空の話なんですが、ここまで読んでいただいてお気づきの方も多いと思いますが「コーライトで一番多いパターン」といっても過言では無い組み合わせです。で、ここで起きる出来事が、アート、クラフト、サイエンスの関係と、それぞれが何をすべきかを考えさせてくれる良い題材だと思うので、ブログにしました。
まず端的にいうと、この組み合わせの場合、アートさんとクラフトさんは大体意見が合いませんw
アートさんは「自分が感じたものを音楽にする」という人なので、そこに「こうだから」という理由や「こうしたい」という目的はあまりないんですね。「アートさんは音楽あれ、と言った。するとそこに音楽はあった」という感じです。
これに対してクラフトさんは「食うために仕事を探したら音楽だった」という人が多いです。注目すべき点としては、クラフトさんにも実は「こうだから」という理由や「こうしたい」という目的が「意外と」ないということです。「クラフトさんは売り上げあれ、と言った。すると発注が来たので、見積もりを出して納品して請求書を送った」という感じです。
で、もう、この二人は合わないです。合わないんだという認識さえ二人の中にはないです。同じ音楽を作っている仲間とは思えないほど世界観が違うのですね。
こんな時こそ、サイエンスの出番です。サイエンスと聞くとなんかアートさんに向かって「そのメロディーは音楽理論的におかしい」って言ったり、クラフトさんに向かって「最先端の機材で高音質で作るべきだ」と言ったりしそうなイメージがあるかもですが、そういうことではないです。サイエンスの役目って、実は「常に目的だけ忘れずに、あとはフラットな気持ちでいること」なんですね。
なので、アートさんが感覚で作ったメロディーを、まずはフラットに受け止めます。そしてその時の目的が「人気アイドルのヒット曲を作る」だったら、そのアイドルが歌えるメロディーに直しつつ、アートさん特有の感覚が面白さとしてアイドル側に好意的に受け止めてもらえるような曲に仕上げていく。
いっぽうでクラフトさんが豊富な経験を活かして作ったトラックも、まずはフラットに受け止める。そして「人気アイドルのヒット曲を作る」という目的を忘れずに、エンタメ的にはもっと思い切った構成にしてもいいんじゃないかとか、失敗を恐れずに新しいことにチャレンジしてもいいんじゃないかとか、そういった点をディレクションして仕上げていく。。。
このようなアート(感覚)の良さと、クラフト(技術)の強さを、論理(サイエンス)でつなぐことが、論理的な人ができる役割なのかもしれないな、と最近ぼんやりながら思っています。
サイエンスを押し付けるんじゃなくて、サイエンスで受け止める。
そうやってアーティストの感覚とクラフトマンの技術をつなげてクリエイティブなものを生み出すのが、サイエンス(論理)なディレクションの役目であり、魅力なのではないでしょうか。