「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

良いディレクションの「三大要素」

 こんにちは、作曲家のペンギンスです。梅雨、早く明けないっすかね。明けたら明けたで今年も猛暑らしいんですけども・・・。
 さて、今日はタイトルのとおり「ディレクションの三大要素」について考えてみたいと思います。コーライティングするときにディレクション(曲を理想のゴールに導いていくこと)がとても大切だという話はこのブログでも繰り返ししてきたと思いますが、いざ「ディレクションってなんだろう?」と考えてみると、結構あいまいな言葉だなと・・・。何がディレクションなのかを考えないで、「ディレクションしましょう」「ディレクションしてください」みたいな事ばかり言っているとディレクションという言葉がただのバズワードになってしまうのではと懸念しています。そこで、今回はディレクションという行為を分解して、いったい何がディレクションにとって大切なことなのかを、もっともっと具体的に考えてみたいと思います。

【良いディレクションの三大要素「INPUT・判断・OUTPUT」】

 さて、ディレクションについて考えてみましょう。はじめに、せっかくなのだから良いディレクションについて考えたいですよね。そこで、良いディレクションをするためには何が必要なのかを考えてみました。

1・INPUT

これはプロの作曲家として特定のターゲットに向けて曲を書くにあたって一番必要なことですよね。「そもそも、ターゲットとなるアーティスト(アイドル)は今までどのような曲をリリースしてきたのか」「そもそも、今の時代ほかにはどんなヒット曲があるのか」などなど・・・。ディレクションとはひとことでいうと決断ですけど、決断を正確にするためには正しい情報が欠かせません。そのアーティストの曲を1曲も聞いたことがない、今なにが流行っているのかも知らない。その状態では、どんなすぐれた作曲家であっても正解にたどり着くことができませんよね。やり方は人それぞれですが、日頃からそのアーティストの曲をよく聞いている、トレンドの音楽は押さえている。そういう状態でこそ良いディレクションができると思います。

2・判断

ターゲットアーティストの曲をたくさん聴いて、USや日本のヒットチャートもしっかり聴いている。これでINPUTは十分ですが、気をつけないといけないのは「たくさん聴いたらすぐ芯を食った曲ができるわけではない」ということです。たくさん聴いたあと、そこから具体的かつ事実(INPUTした情報)に基づいた曲はどんな曲なのかを、みずから判断(決断)して「こう言う曲を作ろう」ということを決める・・・。このプロセスが必要です。そうじゃないと「たくさん曲を聴いて、さて、全然関係ない曲を作る」ということになってしまいます。なので、よいディレクションをするためにはちゃんと自分の責任で「集めた情報から、こういう曲が必要だ。よし、作ろう」と決断することが大切ですね。

3・OUTPUT

これはシンプルですね。「こういう曲を作ろうと決めたから、ちゃんとそのとおりの曲ができるようにチームを引っ張っていく」ということです。一般的にコーライティングの世界でディレクションと言うとき、この「OUTPUT」を正確にコントロールして目指す楽曲に近づけることを指して言っているケースが一番多いなと思います。

 いかがでしたでしょうか。「いろいろな音楽を聴いて、正しい情報をINPUTする」「INPUTを元に考えて、自分なりに『こう言う曲を作ろう!』と判断する」「判断を元に、思ったとおりの仕上がりになるように曲づくりのOUTPUTをコントロールしていく」・・・この3つが揃ったときに、その曲は「ちゃんとディレクションされているね」と言うことができるのではないでしょうか。
 逆に、もしもこの要素のどれかが欠けてしまうと、芯を食った良い曲は生まれませんよね・・・。

===それぞれの要素が欠けていた場合におきること===

1・INPUTが足りない場合

最近のアイドルソングを大して聞かないままに(INPUT不足)
昔の知識を元に正確な分析をして(正しい判断)
良質のアイドルソング(正しいOUTPUT)を作た。
→時代遅れのものしかできません。なぜなら、INPUTがないから。

2・判断が足りない場合

最近の洋楽ダンスミュージックをたくさん聴き込んで(正しいINPUT)
それをそのまま日本のボーイズグループに持ち込んで(判断不足)
かっこいいレゲトンを作ったら(正しいOUTPUT)
→そのグループに合わない曲しかできません。なぜなら、判断が不足しているから。

3・OUTPUTがズレた場合

ターゲットアーティストをよく聴き込んで(正しいINPUT)
次にそのアーティストがトライしそうな良いアイデアを思いついて(正しい判断)
曲を作っているうちに違う方向に進んでいってしまったら(間違ったOUTPUT)
→せっかくのアイデアも無駄になってしまいます。なぜなら、OUTPUTがズレてしまったから。

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いかがでしたでしょうか。
ディレクションと言ってもそこにはいろいろな要素がある。特に、曲を作り始めてから「さぁディレクションするぞ」といっても「事実をちゃんとみていなかったり、情報不足な状態で、正しい判断をできていなかったら、そこからどれだけ良い曲を作っても的外れになってしまう」ということを気をつけたいなと、自戒を込めて思っているのでした。

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