「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

事前に全部公開します!9/18開催「あなたの曲の可能性を広げる12のコードワーク」教材ページ【後半】

こんにちは、作曲家のペンギンスです。

-はじめに-

本日のブログ記事は、以下のとおり9月18日に開催するオンラインセミナー「あなたの曲の可能性を広げる12のコードワーク-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズ Vol.3-」の事前公開教材となっております。

既にお申し込み頂いた方は当日の受講までにこのページをご一読頂いてから参加されますと、スムーズに内容が理解でき、また事前に質問点をまとめるなどセミナーを有効に活用できるかと思います。

またこのブログ記事を読んでためになった!こう言う記事を待っていた!という方はおそらく9/18の当セミナーを受講いただきますと非常に有意義な価値を提供できると思いますので、以下のPeatixサイトから是非お申し込みをご検討いただければと思います。

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「あなたの曲の可能性を広げる12のコードワーク」
-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズVol.3-

https://penguins-tips-vol3.peatix.com/

-本文-

前半の記事では、「コードチェンジのタイミングの重要性」「コードワークの終わりかたの重要性」「音楽には重心があり、重力がある」といった点を中心に、具体的な6つのコードワークをTIPSとしてご紹介しました。今回も引き続き、主要なコードワークを客観視しつつ、とくにJ-POP的な構造とグローバルポップの構造の違いがわかるように説明していけたら、と思います。

なお、今回の講座では、全ての参考曲のkeyをCに移調して表記しています。これは度数表記(I,II,IIIなどトニックからの相対的な度数で表記する方法)よりも見やすく、かつ原曲のkeyで表記するよりも構造を抽象化しやすいためです。

TIPS7「F-G-Am-Em」
参考曲「STAY feat.Justin Bieber」The Kid LAROI

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現在(2021年9月時点)、SpotifyグローバルTOP50の頂点に居続ける大ヒット曲です。さまざまなJ-POP理論書等で「王道進行」などを言われるF-G-Em-Am、いわゆる「4-5-3-6』進行・・・と思いきや、こちらはF-G-Am-Emの「4-5-6-3」ですね。この違いの大きさについて、次の曲と比較して感じてみてください。

TIPS8「F-G-Em-Am」
参考曲「夜に駆ける」YOASOBI

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こちらは2020年の日本の大ヒット曲、YOASOBI「夜に駆ける」です。こちらはJ-POP王道進行のF-G-Em-Am「4-5-3-6」が使われていますね。お気づきの通り、TIPS6でとりあげた「STAY feat.Justin Bieber」とは同じF(4度)始まりなのに全く雰囲気が違います。その違いを作り出しているのが、コードワークの後半。「夜に駆ける」はEm-Amと、正確ではありませんが一応ドミナントとなるEの音からトニックのAへと戻るのに対して、「STAY」ではその逆のAm-Em。ここからも、やはりJ-POPがトニックへと戻る「ドミナント・モーション」やそれに近い動き(類似、変化系)を多用することが見て取れます。前回の記事ではメジャーキーでのドミナント・モーションをみてきましたが、マイナーキーでも例外ではないということです。コードワークの後半にJ-POPとグローバルポップの差異が出てくる、というのも、前回の記事でとりあげた通りですね。

TIPS9「F-C-G-Am」
参考曲「Good Time」Carly Rae Jepsen feat. Owl City

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こちらはサブドミナントのFから、一気にCに行くという進行。F-G-Cというカデンツ進行のGを飛ばしているため、非常にクールで浮遊感のある響きが特徴です。そのためグローバルポップ、特にUS系の楽曲では相当に多用されている印象があります。これをうまくJ-POPに落とし込むことはできないのでしょうか?

TIPS10「F-C-G-Am」
参考曲「ギブス」椎名林檎

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できます。さきほどのGood Timeと同じ進行をサビで用いているのが椎名林檎の「ギブス」です。いかがでしょう。同じF-C-G-Amなのにメロディーの天才的な載せかたにより見事にすぐれたJ-POPに昇華されています。このように、Fのコード、いわゆるサブドミナントからはじまるコードワークは、原理的にドミナント・モーションを回避するのに役立つ側面があり、繊細な感情や浮遊感を演出するのに適しています。そのためJ-POPにおいては王道進行F-G-Em-Am(4-5-3-6)として、グローバルポップではF-C-G-AmといったF-C型のコードワークで実例が多数みられます。

TIPS11「F-E7-Am-Gm7-C7」
参考曲「Got to Be Real」Cheryl Lynn 

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ここからは、ソウル、R&Bの世界で多用される進行を紹介したいと思います。TIPS11ではCheryl Lynnの「Got To Be Real」をご紹介します。こちらのコードワーク「F-E7-Am-Gm7-C7」は近年J-POPの、YOASOBI、yama、ずっと真夜中でいいのに等の「夜行系アーティスト」の楽曲できわめて多用されているコードワークで、これを用いたGrover Washington, Jr.の「Just the Two of Us」からとって「Just the Two of Us進行」と呼ばれたりもしています。このコード進行の利用例を、つづいてJ-POPからみてみましょう。

TIPS12「F-E7-Am-Gm7-C7」
参考曲「丸の内サディスティック」椎名林檎

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・・・というわけでこちら、椎名林檎「丸の内サディスティック」のサビ部分ですね。実はこのTIPS11、12あたりはこれまでのTIPSのような「J-POPとグローバルポップで同じコードワークがいかに違う活用をされているか」という話とはちょっと違うんですね。はい。こういったソウル、R&Bをルーツに持つコードワークは、J-POPでもグローバルポップでもかなり近しい文脈で、似たような使われかたをしていることが多いんです。これはおそらくソウル、R&Bといったルーツミュージックは、現代の最先端のグローバルポップから歌謡曲寄りの伝統的なJ-POPまで、幅広く影響を与えているので、同じコードワークが同じ理解の土台の上で共通に使えているということかと思います。

TIPS13「Dm7-G-Em-Am」
参考曲「September」Earth, Wind & Fire

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というわけで、TIPSが予定の12個を少し超過してしまいましたが、最後に追加で2つ、ご紹介させてください。同じ「Dm7-G-Em-Am」というこれまたソウル、R&Bをルーツに持つ2度(Dm7)始まりのコードワークです。まずこれを使った大ヒットといえばEarth, Wind & Fireの「September」ですね。サビ(コーラス)の部分にご注目ください。

TIPS14「Dm7-G-Em-Am」
参考曲「Message」福山雅治

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いっぽう、こちらがJ-POPの懐メロでの同じコードワークの使用例。ソウルの影響は相当少なく感じるロックバンドなアレンジですが、サビで同じコードワークを使っていますね。ホーンセクションが似合うのはEarth, Wind & Fireと共通しています。ルーツミュージックからの影響が、まったく違うJ-POPとグローバルポップで違う花を咲かせた瞬間といえると思います。

 

いかがだったでしょうか。前半・後半を通した全体的なでの学びをまとめておきます。

・コードワークにおいては、コード進行だけでなく、コードチェンジのタイミングも重要
・コードワークの冒頭が注目されがちだが、本当に曲の雰囲気を作るのは終わり方
・G7からCに戻る力「ドミナント・モーション」など、音楽には重力がある。
・ドミナント・モーションはマイナーキーでも存在し、J-POPでは多用される。
・サブドミナントから始まるコードワークは、ドミナント・モーションの力を打ち消す効果が期待できる。
・ソウル、R&Bにルーツを持つコードワークはJ-POP・グローバルポップ双方で同じように活用することができる

これらのTIPSを活用して、あなたの曲をこれまでよりも幅広く、多様なニーズに合わせて多様な表現ができるようになってくだされば幸いです。

最後までお読みくださりありがとうございました。講座を受けるかたは、当日おこしくださるのを楽しみにしています!

 

 

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「あなたの曲の可能性を広げる12のコードワーク」
-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズVol.3-

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