「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

事前に全部公開します!12/12開催「シンガーの気持ち、わかってますか?-作曲家に贈る12の秘密-」教材ページ【前半】

こんにちは、作曲家のペンギンスです。

-はじめに-

本日のブログ記事は、12月12日に開催するオンラインセミナー「シンガーの気持ち、わかってますか?-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズ Vol.5-」の事前公開教材です。

既にお申し込み頂いた方は当日の受講までにこのページをご一読頂いてから参加してください。スムーズに内容が理解でき、また事前に質問をまとめるなどセミナーを有効活用できると思います。

またこのブログ記事を読んでためになった!こう言う記事を待っていた!という方はおそらく12/12の当セミナーを受講いただきますと非常に有意義と思いますので、以下のPeatixサイトから是非お申し込みをご検討いただければと思います。

↓↓↓当ブログ記事が事前公開教材となっているセミナーはこちら!↓↓↓
「シンガーの気持ち、わかってますか?-作曲家に贈る12の秘密-」
-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズVol.5-

https://penguins-tips-vol5.peatix.com/

-本文-

J-POPなど、いわゆるボーカルが歌う「歌モノ」の作曲家には、おおきくわけて2つのパターンがあります。じぶん自身がシンガーとしての経験がある作曲家(いわゆる「シンガーソングライター」など)と、そうではない作曲家です。今回の企画は、前者であるゲストの前迫潤哉さんと、後者であるペンギンスによる対談形式となります。

歌う立場からすると当たり前のことでも、歌った経験がない作曲家にはイメージしづらいことがあります。歌う、というフィジカルな経験が必要とされるノウハウは、頭ではわかっているつもりでも、なかなか実践するのはむずかしいものです。それをTIPS形式に落とし込み、少しでも伝えていこうと言うのが今回の企画です。

ではさっそく、いってみましょう。

TIPS1「K-POP、女性大人数アイドルグループ、男性大手アイドル事務所等、各案件の前提を理解しよう」

作曲家としての基本ですが、まず最初に「楽曲をこれから書こうとする対象、つまりターゲットの案件をよく理解する」ことが大切です。具体的には、、、

・歌っているのは1人なのか、複数なのか(グループに見えても実はシンガーとダンサーではっきりと役割が分かれていることもよくある)
・複数で歌っている場合、ユニゾンで歌うのか、ソロで歌い回すのか(J-POPではユニゾンで歌うことがよくありますが、K-POP/洋楽等ではソロシンガーが複数人いるという考え方のほうが一般的)
・ダンスパフォーマンスを前提としているのか、シンガーとしての立場がメインなのか

こういったことを理解しないと、そのアーティストの現場で成り立たない楽曲を作ることになりかねません。

TIPS2「レンジの捉え方」

基本中の基本となる、歌の「レンジ」、高音から低音まで、どの音域で歌えるのか。これを守ることが非常に大切、しかも「想像以上に」大切です。良いメロディーだからと、ここをどんどん逸脱していくようでは、やはりこれも「そのアーティストの現場で成り立たない」楽曲となってしまいます。
加えて、「常にベストを目指す」ということが大切です。歌のレンジについて「その音程が”出せる”」ということと「その音程で”ベストな歌が披露できる”」というのは全然別の話です。レンジの高音側の極限や、低音側の極限は、だいたいベストなコンディションで歌えるものではありません。「出せるレンジ」という考え方に上乗せして「美味しいレンジ、魅力的なレンジ」という、一歩深く考慮した考え方をすることが大切です。

TIPS3「音符の長さ(音価)を意識する」

歌っていると、あまりにも当然で何も意識することはありませんが、鍵盤等でメロディーを作る場合に、非常に見落としやすいのがこの「音符の長さ」いわゆる「音価」の意識です。まず、同じタイミングで音符が始まるメロディーであっても、全て短い音(スタッカート)で歌うイメージなのか、全て長い音(レガート)でたっぷり歌うのかで、そもそもその2つは「別のメロディー」と考えるべきです(実際、楽譜ですら別の書き方になりますよね)。実際に歌うときにはメロディーは歌詞と一体化したものになりますので、メロディーの音符の長さが違えば、歌詞もまったくちがう乗せ方をすることになるはずです。鍵盤等でメロディーを作る際には、長さも含めた表現として成立させることが必須です。

TIPS4「ブレスも音符のひとつです」

TIPS3と表裏一体のTIPSですが、ブレス(息継ぎ)がどこに存在するのか、という観点も忘れてはなりません。これまた、シンガーとして歌いながら曲を作っていればむしろ意識しないことなど不可能なのですが、鍵盤等でメロディーを作る場合、ブレスをどこでするんだ、というスキマのないメロディーになってしまうことは、とくに初心者の方ほどよくあるのではないでしょうか。
ブレスについては制約としてとらえるのではなく、むしろメロディーをどう活かすかという可能性を広げるチャンスのようなものだと私(ペンギンス)は捉えています。同じ音程のメロディーでも、ブレスによる区切りがどこに入るかで、メロディーが音として伝える意味合いはだいぶ変わってきます。そういう意味で、「ブレスも音符のひとつ」という考え方をして、どこにその「音符」を入れるか、という作曲の一部としてとらえることが大切です。

TIPS5「歌割りは、ライブのスポットライトで考える」

歌割りとは、複数名が歌うグループものの楽曲で、「どのメンバーがどこを歌うか」という分担をきめたもののことです。Aメロはメンバーa、メンバーbと歌いつぎ、サビでは全員で歌うリフレインと、合間にメンバーcによるラップが入る、といった分担ですね。
この歌割りの重要性について、作曲家の皆さんは本当に意識できていますか?一度人気グループ等について「曲名 歌割り」でググってみることをお勧めします。びっくりするほど沢山のファンの方のブログ等で、自分の耳で聴き取った好きな曲の歌割を掲載されている方が見つかります。そう、じつは作曲家以上にいちばん歌割の大切さを感じているのは、そのアーティストのファンの方なのです。「自分の”推し”が歌っているフレーズを好きになる」「同じ歌詞でも、このメンバーが歌っていると思うとそこに深い意味が生まれる」・・・作曲家からするとひとつのメロディーに過ぎなくても、歌うメンバーや聴くファンの方にとっては、自分に(推しに)割り振られた歌割が全てだったりします。
作曲するときには、まず「歌割り」が成立するようなメロディー(分担が可能な構造のメロディー)であることが大切です。その上で、メンバーひとりひとりにどこを歌わせるかを、声質やキャラ、歌唱力などを元に自分なりにイメージできるところまでいけば良いですね。スポットライトが誰に当たるか、というビジュアルイメージに変換して歌割を考えることも、有効な方法だと思います。

〜制作面〜

TIPS6「ボーカルディレクションのコツについて」

こちらは、当日に前迫さんから直接お話いただこうと思います。ボーカルディレクションとは、ボーカルをレコーディングする際に、シンガーと、場合によってはレコーディングエンジニア等とのコミュニケーションをとりながら、「良いコンディションの声を引き出し、個性や強みを最大限に活かし、曲の本来もつ魅力がでるような歌になる」ように、現場で指示を出してレコーディングを進めていくことです。いっけん単純な作業に思えますが、実はこれが全ての音楽制作のなかでも、最も奥深いと言われる難関です。ボーカルは半分が歌で、半分がディレクションと考えるくらいでいいと私(ペンギンス)は思っています。「ディレクションされる側(シンガー)」「ディレクションする側(作曲家、ディレクター等)」の両方の立場を知る前迫さんのお話が楽しみですね!

 

いかがだったでしょうか。ここで軽く前半での学びをまとめておきますね。

・歌う相手のことをしっかり知ることが第一歩

・歌のメロディーは楽器と違う。音域、音価、ブレス等への配慮が必要

・メロディーそのものだけでなく、「誰が歌うか」「どう録音するか」も大事


という感じですね。

後半も、これらのことを頭におきながら読み進めてみてください!
それでは後半でまた、お会いしましょう。