「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

インスピレーションをいつまで待つかのチキンレース

 こんばんは、作曲家のペンギンスです。返事のないLINE催促せずにいつまで待つか、欲しいものAmazonでセールになるまで待つか、子供が自分でやろうとするとき失敗してもいつまで待つか。待つって難しいですよね。予定が決まっていても待つ時はそわそわしたりしますから、不確実なものを待つときは尚更です。
 作曲家が一番待っているのは「メロディーが降ってくる瞬間」です。これはコーライトであっても変わりません。数人でメロディーを考えて、ハミングしたり鍵盤を弾いたりしている時、ふと誰かがいいメロディーを考えて、全員が「それいいね!」となる瞬間って何度も経験あります。ひとりでも、コーライトでも、メロディーが降ってくるというのはとても気持ちのよい瞬間です。
 ただ、プロとして締め切りまでに一定クオリティの曲を作らなければいけない場合、時には何も降ってこないけど書かなければいけない場合もあります。というか、大抵そうです。こういう場合、基本的にはベストなメロディーが浮かぶのを待ちつつも、これ以上遅れるとまずいなというタイミングになったら、仕方なくある程度理詰めで考えてメロディーを作り始めます。この理詰めで考える作業の中で不意に良いメロディーが浮かぶケースが一番多いですね。浮かんだら、それを頼りに展開させて良い仕上がりに持っていけます。ただそれもうまくいかない場合は、最終的には理詰めのままで「悪くはないね」というメロディーに落ち着くことも正直あります。(それが好評だったりするのでわからないものなのです)
 これを繰り返しているうちに、ある日ふと疑問が湧いてきました。上記の「これ以上遅れるとまずいなというタイミング」を自分で判断してるわけだけど、本当にそのタイミング、合ってるかな?
 で、僕なりに出した答えは「早すぎる、もっと待て!」でした。
 僕はもともとの性格として締め切りを守れないことが非常に恐怖なタイプで、なので何でも前倒し前倒しでクリアしようとする傾向があります。メロディーもそうで、とにかく早めにFIXしようとする癖があったんですね。でもよく考えてみると、ここでFIXしたらスケジュール的にこのあとずいぶん余裕があるじゃん。もちろん、後続のプロセスに余裕を残してあげることは大事なのですが、忘れてはいけないのは「あと1時間待って最高のメロディーが出てきたら全てはひっくり返る」ということです。そのためならインスピレーションはギリギリまで待つ。まるでギリギリまでアクセルを踏み続けるチキンレースのように。。。もともとの性格があるのでそうはいっても本当のギリギリまで考えづつけることは未だに苦手なのですが、今後は人に迷惑をかけない程度にギリギリまで自分を信じてインスピレーションを待ってみようと思うのでした。
 ちなみに、インスピレーションをギリギリまで待てるようにするためにも、仮歌さんの手配とかボーカルエディットとか、段取りや効率が重要な場面ではしっかりと効率化することが大事だなというのも気づいたことのひとつです。効率ってなにかとクリエイティビティと相反するものと思われがちですが、効率が悪いから時間がなくなって、時間がないからクリエイティブなものができないんですよね。だからクリエイティブな自分を最大限に発揮するためにも、効率には今後もこだわっていきたいと思っています。現場からは以上です。

【次回予告】
次回は「いいね!の一言も大切な仕事」です。