こんばんは、作曲家のペンギンスです。
曲でもなんでもそうですが、ものをつくる仕事にプライドを持っていると、どうしても「背中で語る」タイプのコミュニケーションをしてしまいがちだなーと自戒を込めて思っています。「余計なことは言わない。目の前の音楽を良くすることに全力を注ぐ」と。ただコーライトはチームで曲を作るものですから、チームのメンバー間で良いコミュニケーションが取れていることがとても大事になってきます。
先輩作家から聞いた話ですが、LAの某一流トップライナーはライティングセッションの時に、ふとシンガーが歌ったメロディーやトラックメーカーが弾いたフレーズが良かったときに、瞬時に気づいて、「今のメロディーは良かった」「そのフレーズ、いいね!」と速攻で伝えて曲に取り入れるのが上手いそうです。人が何となく生み出したものに気づくアンテナが物凄く高いんですね。ライティングセッションしていても自分の作業に精一杯で、周りにいるメンバーが何をしているか気づいていない。これではコーライトではなくて「分業」になってしまいますね。なので自分が何か作業をしていても、隣の人のハミング、ヘッドフォンから漏れ聞こえるビート、全てに注意をはらいながらコーライトをすることが大事になってきます。
僕自身の経験でもこんなことがありました。あるキャンプで、3人1組でコーライト。全員が楽器を持ってメロディーを考える。何度か一応それなりの形にまとまるが、どうしても採用される気がしないので、いずれもボツに。段々煮詰まってきたので、近所の海岸に散歩に行って気分転換しました。海から帰ってきたら早速ひとりがフンフーン、とメロディーを口ずさんだんですね。それがかなりいい感じだったので、「今のいいですね!』と言ってそのフレーズを使って曲の糸口にしました。結局、そこからとても素晴らしいバラードを作ることができ、見事に某人気グループにキープされました。
キャンプで煮詰まったときほど周りの人の言うこと、歌うメロ、奏でるフレーズに注意を払うのが大事だなと思います。煮詰まったと思っている時って、いいアイデアが出ているのに気づいてないだけのケースも多いんだなーと気づくことができました。僕はお笑いが好きなので作曲家を芸人さんに例えることも多いんですが、芸人さんでいうところの「拾う」というやつですね。小さなボケもちゃんと拾ってツッコんで笑いに変える。ディレクションタイプのメンバーには、特に求められる能力だと思っています。
【次回予告】
次回は「雰囲気づくりが最大のディレクション」です。