「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

曲が良くなる(ダメになる)「真実の瞬間」をとらえよう!

こんにちは、作曲家のペンギンスです。

僕が尊敬する方でいつも発信に注目してるひとりに、経営コンサルタント・経済思想家の倉本圭造氏がいます。京大からマッキンゼー・アンド・カンパニーを経て肉体労働からカルト宗教、ホストクラブまで経験後、船井総研を経て独立、というなんかどういうことなんだという経歴の方ですが、昨日そんな倉本氏がwebメディア「FINDERS」に掲載していた記事がとてもよかったです。

finders.me

3.11のときの原発事故がそういうイシューであったように、2020のコロナショックも人々の分断と罵り合いをもたらしました。。。SNSで仲の良い人、お世話になっている人が年甲斐もなく感情的になったり、現場の苦労も顧みず政府や自治体を嘲笑したり、かと思えば感受性豊かであるがゆえに鬱に苦しんでいたり、実際問題、音楽の仕事が飛んで金銭的に窮乏されていたり、あるいはデマに惑わされたり、ついには謎のバトンを回したりしている感じが9年前とそっくりですね。とても苦しく、つらい気持ちになり、しかもそれをどこかに発信しても誰も幸せにならないので、最近SNS断ちをしていまして、こうして発信行為をするとき以外実はタイムライン的なフローはみないようにしています。早2ヶ月ほど経ちましたが、主要報道以外をシャットアウトしても全然自分の人生に困ったことはなく、このままSNSは見るものではなく発信するものとして使っていこうと思っているところなんですが、そんな状況でも欠かさず読んでるのが倉本さんの記事です。
極論に走らず、常にコンサル的論理思考と科学的事実に加えて人々の「まぁそういう結論になっちゃう気持ちもスゲェわかるよ・・・」という「現場のリアルな感情」を汲み取りつつ、「みんな望んでるゴールは同じだよね?」というアウフヘーベンにより全員が納得できる共通解を探っていくその姿勢には大いに刺激を受け勇気付けられます。ぜひご一読いただければと思います。

で、このブログはもちろん「日本初の(そして唯一の?)コーライトブログ」なので笑、もちろん上記の記事もコーライトに関係ある、というか関連づけて考えるとおもしろいなーという箇所があるから取り上げているわけですね。
そこをちょっとフォーカスしてみます。

大事なのは「そもそも会わない・外出しない」的にザツに一緒くたな対処をするのではなく、

「会う必要があるなら会ってもいい」「外出する必要があるなら外出してもいい」
けれども、
「ウィルスが伝播する真実の瞬間」だけを選び取って、「それがそもそも起きづらくするクセ付け(行動変容)」を出来るだけローコストな形で工夫していくこと
です。(上記倉本氏記事より引用、強調箇所はペンギンス)


というね。
僕がすごく共感したのはこの「真実の瞬間」というところです。で、ちょっと勝手ながら倉本氏の文章を引用のうえアレンジさせていただき、今日コーライトについて言いたいことを一言でまとめてみたいと思います。

大事なのは「そもそもコーライトしない・一人でしか作曲しない」的にザツに一緒くたな対処をするのではなく、

「ひとりで作る必要があるならそれでもいい」「コーライトしないほうがいいならそれでもいい」
けれども、
「コーライトで曲がダメになる真実の瞬間」だけを選び取って、「それがそもそも起きづらくするクセ付け(行動変容)」を出来るだけローコストな形で工夫していくこと
です。


ね!
というわけで今日のタイトルは「曲が良くなる(ダメになる)「真実の瞬間」をとらえよう!」です。

はじめに申し上げておくと「曲がダメになる」というとネガティブですが逆に「曲が良くなる真実の瞬間」も当然ありますので、このようなタイトルにしました。とにかく、雑駁に「この曲は良い、悪い」「コーライトは良い、悪い」じゃなくて「この曲のここは良い、ここは悪い」「コーライトのここは良い、ここは悪い」という風に「真実の瞬間」だけを選びとって、そこが悪いなら直す、良いならひろげる、という判断がとっても大事ということです。

で、いよいよ具体的な話に入っていくんですが。曲作りをしている方ならご経験があると思いますが、「スゲェ傑作が思いついたと思って作り始めたのに、できあがった曲はイマイチだ」「正直たいして期待せずに始めたコーライティングで、いつのまにかすごい名曲が完成していた」ってこと・・・両方ありますよね? 僕は両方あります笑。これ、一体なにが起きているんでしょう?「今回はイマイチだったね」「いやぁ、良いのができちゃった」で終わらせずに、「それは一体なぜだったのか」を検証するのが、やっぱりものづくり日本の「ジャパニーズ・コーライト」の真髄(であってほしい)ですよねー。

そうして振り返ってみると、「真実の瞬間」って、あるんですよね。振り返ってみると「あそこからこのコーライトはなんかおかしくなったよな」とか「この曲、あの瞬間から名曲になったよな」みたいな、その曲の分岐点になるような瞬間は、確実にあります。

この「真実の瞬間」には特徴があって。

1・「真実の瞬間」かどうかは事後的に決まる(注・音楽の話であってコロナは知りません)。
2・「真実の瞬間」がコーライトが始まる前にもうある場合もある。
3・たんにクオリティーが高い(低い)アウトプットが出たことを「真実の瞬間」とは言わない。
4・「真実の瞬間」が本当はない時でも「あれが真実の瞬間だったのかな?」と振り返ったほうが、自分のためになる。

というとこですね。ま、じゃあ、とにかく具体的なエピソードしてきましょう。

良かった曲がダメになるの王道でいうと「その曲固有の良さがあったのに、それをコーライトメンバーが理解しきれず、一般的な正解に持っていこうとしちゃう」みたいなパターンはとても多いなと思います。あえて特定の年代のサウンド感を狙っていたのに、最新のサウンドをむやみに取り入れた結果、それが「(ダメになる)真実の瞬間」だった、ということですね。上記の3番のまさに良い例でして、クオリティーが高いからこそみんな「これはちょっと違くね?」と言い出せず、カッコいいけどクライアントのオーダーからズレたものが生まれるという話です。
この場合「だからコーライトはダメなんだ」とならないのはもちろん、そのトラックメーカーだって別に悪いことをしているわけじゃありません。仕上がりだってクオリティーは悪くない。だけど「なにが今回、求められているか」ということを全員で意見一致させず、ひとつになりきれないまま進めると、そういう瞬間がおとずれてしまう、ということですね。
それが「真実の瞬間」なんだ、とわかれば、「じゃあ最初からコンセプトを言葉でまとめて書いておこう」とか、「後戻りが難しくなるポイント(仮歌を発注する時点とか)がきたら一回みんなで議論をする習慣をつけよう」みたいに、次から何をすれば良かった曲がだめにならずに済むかわかるはずです。

いっぽう悪かった曲が名作になるのパターンでいうと「メロディーや歌詞をあきらめずに追求しつづけた結果、眠っていたその曲固有の良さが開花するようなワンフレーズを見つけることに成功した」というパターンがやはり一番ポピュラーかなと思います。これは結構おもしろいことで、いつも必ず起きるとは限らないけれど、「何も悪くはないけどとりたてて良くもない」みたいなメロディーをシビアに10回近く修正のやりとりをしていった結果、7,8回目くらいで「おいおい、こりゃぁ名曲「だった」のか。クゥ〜気合が入るぜ」と、まるで丸太の中から観音菩薩の姿が鑿(ノミ)によって削り出されるように良いメロディーが発見されることがよくあります。
この場合も「ほらやっぱりコーライト最高だろ?ケミストリーだ!」と安易にコーライト万能論に与するのではなく、たとえばMessengerでこのやりとりをしているのだとしたら、あとからやりとりのmp3を聴き返しながら、ヒマな時にでもMessengerのログを読み返すくらいの習慣はあってもいいと思います。「ああ、この人のこの発言、こういう意味だったのか」とあとからその価値がわかることだってあるはずです。そうやって具体的な「真実の瞬間」を「何時何分、地球が何回回った時」くらいの精度で笑、追求してみることが大切だと思います。
そして「真実の瞬間」が見えてきたら「誰それさんとコーライトするときは、すごい控えめな人だけど、無理やりにでも意見言わせてみるとかなり的を得た鋭い問題点の指摘をするから、ちょっと不自然かもしれないけど次回から、ちょいちょい@でreply飛ばしてみよう」みたいな具体的な行動に結びつけることだってできるはずです。

いかがでしたでしょうか?

コーライトが普及するにつれて、何回かコーライトしただけで「流行ってるけどロクなもんじゃねえな」と「事実上のコーライト食わず嫌い」になったり、逆にあまりコーライトをしていないうちから「コーライトを上手にできなきゃ・・・!まずはしっかりコーライトの勉強を!」みたいにちょっと言い方悪いけど「コーライト信者」というか「コーライト厨(笑)」みたいになったり、と色々なケースが出てくるかもしれません。

でもこれ、どっちも極論ですよね。極論に走らずに音楽への愛を本当にみのらせ、なんならビジネスとして成立させるためには、ここでも倉本氏のいう「真実の瞬間」を切り分け、みきわめることが大切です。

コーライトは単なるツール、手段にすぎず、大切なのは音楽、もっといえば音楽を届けてお客様(クライアントやリスナー)が笑顔になってくれることです。それが作曲家のミッションなのだということを忘れずにいれば、ひとりひとりが自分に似合った形で、無理せず末長くコーライティングを楽しんでいけるのではないでしょうか。

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ギターに挑戦

こんにちは、作曲家のペンギンスです。
最近知人からエレキギターを借りました。
Fender Telecasterです。
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フェンダーとギブソンの違いとか、フェンダーでもストラトとテレキャスの違いとか「名前が違う!」ぐらいしか知らないしw、ピックアップがどうのとか全然わからないんですが、とりあえず借りてきてシールドぶっさしてオーディオインターフェースにつないで「おお、エレキの音だ(当たり前)」とか言って録音してエフェクターかけて遊んでます。

EメジャーとEマイナーしかコード、押さえられないしw、コードの押さえ方とかググって調べると「お前、言うのは簡単だけどな」みたいな押さえ方ばっかりで、指が痛いです。

なんでギターに興味を持ったかというと、ギターそのものに興味をもったわけではなくて、アナログな楽器、電気信号をリアルに録音するってことの必要性を感じたからです。

最近、自分がトラックメーカーをやった曲でありがたいことにアレンジも含めて採用いただけることが出てきたりして、アレンジャーを名乗れる日も近いのかなと思っているのですが、やっぱりMIXはプロのMIXエンジニアの人には遠く及ばなくて。

なんか、フェーダーとパン、EQ/コンプとリバーブ/ディレイで綺麗にミックスは一応するんですけど、全体の音像がなんかペラペラしていて。

作家仲間でもMIXがかっこいいやつって「立体的」で「空間が広くて」、「つやつやしてるw」んですよね。

この感じを出したいなぁ、なにが足りないんだろうなぁ、と思って考えると、そもそも打ち込み歴が長いので、鍵盤も当然MIDI音源だし、「リアルな生音を収録する経験」が少ないから、「三次元の音空間を身を以て体験しながら創作する」経験値が足りないのかもしれないな、と思いあたりまして。

ボーカルとかはそれなりにレコーディングしてきましたが、やっぱり自分が発する音を自分で録ってみないとわからないのかもしれない・・・と思い、だったら自分でエレキギターを弾いて、その音を録音したらなにかわかるんじゃないか、と思ったのです。

まだチューニングして、じゃらーんとかコード弾いて、そのまま録音してるだけですが、弾き方で全然音も変わるし、強弱をつけて弾いたものが目の前で波形になってく感じとか、ギタリストの人からすると「こいつはこれまで何やってたんだ」と思うと思いますがw、一個一個が面白いです。

で、プラグインのアンプシミュレータをさして、OverDriveとかかけて、ドグシャアァァ、メメタァァ(ジョジョ)ってやってると「確かに、開放弦がちょっと鳴っちゃったとしてもこれはどうでもいいなw」というギタリストの気持ちがちょっとわかったりします。

そのうち、曲に自分のギターをいれられたらいいなと思います。

東京女子流「キミニヲクル」楽曲提供しました!

こんにちは、作曲家のペンギンスです。
南極でかしわもちたべてます。
ひどく凍りついている。

さて本日、2020年5月5日はavexのグルーヴィーな女性ボーカルグルーヴ「東京女子流」のデビュー10周年です!

そんな東京女子流さんのデビュー10周年記念シングル「TOKYO GIRLS JOURNEY(EP)」にM-4「キミニヲクル」楽曲提供させていただきました! 

【メーカー特典あり】 Tokyo Girls Journey (EP)(CD)(2L生写真付き)
 


「キミニヲクル」
作詞・作曲:ペンギンス/The Answer/福原健太郎/Ryo Ito
編曲:ペンギンス

10周年の過去、いま、未来を見渡す、グルーヴィーでセンチメンタルで、だけどポジティブな楽曲に仕上がっています。

open.spotify.com
Spotifyでもきけます

そしてYouTubeには、昨今の情勢下でリモート撮影された「キミニヲクル」Music Videoも公開中です。


東京女子流 / キミニヲクル

10年前に誰がこの状況を想像しただろう。未来は予想もつかないけど、まだまだイケるって、ほら。

東京女子流さん10周年本当におめでとうございます!

【告知】オンラインイベントでDAWについて語ります!

こんばんは、作曲家のペンギンスです。
南極にひきこもっています。
空が綺麗になりました。
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あれ木が生えてる

さて南極から、今や人類をつなぐツールとなったZOOMにてイベント出演します。
ていうかオンラインイベントです。

cwf20200502.peatix.com

「<超初心者向け>初めてのDAW作曲入門講座〜巣ごもりの今こそ宅録しよう!」と題して、山口哲一さん、Kaz Kuwamuraさんと一緒に「作曲、宅録(自宅録音)、DAW(Digital Audio Workstation)」をテーマにトークします。
背景としては昨今の社会情勢のなかで「宅録ができると仕事が増える(逆にいうと宅録ができないと仕事はもうない)」という状況におかれている歌手・演奏家等の実演家のみなさんが多くいるという状況をふまえ、「これまでDAWに触れてこなかったバンドマン、クラシック・ジャズ系ミュージシャンの方などがDAWをもちいた宅録で仕事ができるように」という願いから開催されるイベントです。当然、これを機にコーライティングに参加する人が増えますように、というのもひとつの願いです。
なので「音楽の素養、経験はあるが、作曲未経験だったり、DAWによるセルフ・レコーディングの経験がない」という方を主な対象にして、「そもそもDAWとはなにか」「宅録で必要な機材とはなにか」と言うレベルから話していくということをやりたいと思います。

申し込みは上記Peatixサイトから。無料イベントなので、ぜひよろしくお願いします!

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【告知】オンラインイベントで作曲について語ります!

こんにちは、作曲家のペンギンスです。
南極にひきこもっています。

4月18日(土) 18:00-からイベントに出演します。
もちろん南極からなのでオンラインです。
ていうかオンラインイベントです。

cwf20200417.peatix.com

ご存知山口ゼミの山口氏、伊藤氏に加えてソニーミュージックエンタテインメントのKazyさんこと伊藤和彦さんをお招きして、作曲コンペについて赤裸々に語るオンライン飲み会(?)イベントです。

僕は飛び入りスピーカーとして作曲家の立場からお話に参加させてもらうと思います。

割とゆるい感じではありつつも、メンツ的にここでしか聞けない話(言っちゃいけない話w)などがたくさん飛び出す予感がしております。

なので、作曲家をめざす方、作曲に興味のあるかたは聞いて損はないひとときになるのではと思っております。

スマホアプリ「Peatix」から上記リンクをたどってお申し込みください。もちろん無料です!

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音楽理論で悩むあなたに「SoundQuest.jp」紹介してみる。

こんにちは、作曲家のペンギンスです。新年度はじまりましたね。まだ春なのに肌寒い日が続きますが、みなさま体調くれぐれもお気をつけください。

さて、ちょっと時間ができたので久々のブログ更新です。「最近ブログ更新してないなー、何か記事書きたいな、どうしようかな」と小一時間ほど悩んでいたのですが、やっぱり書くからには読まれる記事=みんなが知りたいと思ってることを書きたいなと思うに至りました。

で、僕のまわりでどんな声を聞くかな、と思い出してみると、前回、前々回と書いたような「コーライトする上での悩み」というのももちろんあるんですが、それ以外にも「作曲そのもの」に関する悩みもあるんですね。その中でも特に多いのが「音楽理論」です。「コード進行についてなにもわかってなくて、自分の曲がこれでいいのか不安」「自分の曲のキーもわからないのでコーライト相手に申し訳ない」みたいな声が多いです。

というわけで改めてそういう声と向き合ってみて、よしじゃあ音楽理論について僭越ながらブログを一筆・・・というところではたと気付くんですが。

・そもそも音楽理論がわからなくてなにか困ることあるの?
・音楽理論が「わかる」と「わからない」の境目はどこなの?
・音楽理論ってクラシックとジャズとポップスじゃ違うのでは?

とか、色々ツッコミたくなるんですね笑。

で、どうやら話を聞いてみると「自分で作っている曲に自信が持てない、まわりからなにやら難しそうな質問をされ焦る、どうやら音楽理論という名前のつくものがあり、それを知らないとなんか知らないけどヤバイらしい、だからとにかくその音楽理論とやらを教えてくれ!」というケースが多そうです。

つまり、落ち着いて考えてみると「自分がつくろうとしている音楽をよく理解して、自信をもって良い曲を作りたい」ということがゴールであるとわかります。

たとえばJ-POPならJ-POPで「そのとき自分が作りたい曲がどんなものかをあらかじめ理解する」こと、「それを実現するためにはどんな作曲の手法が似合うのかを判断する」こと、「実際につくりながら、ちゃんと作りたい曲が作れているかチェックする」こと、こういったことができれば、きっとうまくいきますよね。

そこで、今回のブログでは「主にJ-POPを作りたい人向けに、メロディーがすぐれ、全体のバランスのとれた良曲を作るために、知っておいて損はない知識」を紹介することにしました。逆にいうと良い曲が作れるならば別にわざわざ改めて学ばなくても多分大丈夫な知識です。とはいえ、僕もそうだったんですが基礎とされてる知識の中にもちょっとだけ知らなかった部分があったりして、そこを知るだけで作曲が一歩レベルアップしたりするので、改めて学んで、全部読み飛ばして1箇所だけ「ほぉ」と思えたら大収穫だと思います。

で、その紹介の仕方なんですが、今日ずっと1日かけて図で説明しようとしたりなにか映像で説明しようとしたりして「めんどいなぁ」と思っていたんですが。

忘れてました。大切なサイトを。
僕が説明するよりまず先にこっちを読んだほうが絶対いいサイトを。

soundquest.jp


こちらのサイト「SoundQuest」さん、激・おすすめです。

これは僕の尊敬する作曲家の友人である安楽謙一さん(安室奈美恵「Hope」などの作者)から教えてもらったんですが、いろいろな理論書、理論サイト、YouTube動画がある中で、これほどまでに本質的に、シンプルに、音楽理論というものをとらえなおし、現代の作曲のニーズの中で整理して再提示してくれているコンテンツはないです。

なので、まずはブログでこのサイトを紹介してみることにしました。このサイトを読んだ感想とか、そこで生まれた疑問があればどんどんコメント欄やSNS等で僕に教えてください。それをもとに必要があればまた音楽理論について語る機会をつくってみたいと思います。

なお、このサイトは一応「無料の会員制サイト」という形式になっています。現在の社会情勢を鑑みて2020年4月1日現在、特別に誰でも読めるようになっていますので、お試しするなら今がチャンスです。登録はこちらからできるみたいです(スクロールすると一番下に登録ボタンがありました)。

簡単に紹介すると、このSoundQuestは「3つのエリアからなる巨大なDTM・音楽理論サイト」です。Quest・Library・Channelという3つのエリアにわかれていますが、LibraryはDTMのプラグインデータなどの情報、Channelは掲示板で、理論を一方通行で教えてくれるのはQuestというエリアになってます。

で、ここで語られている音楽理論というのが、いわゆるクラシックやジャズの音楽理論ではなく「自由派音楽理論」というこのサイト独自の理論なんですね。

こう聞くと「おいおい、我流はいらねぇんだよ」「人と同じ理論で語るから理論なんだろ。他の人との会話の共通基盤にならないものは理論と呼べないよ」と思うかもしれませんが、ご安心ください。

この「自由派音楽理論」には、一般的な音楽理論が説明する内容が全て含まれており、既存の理論用語については、それを変えることなくそのまま使っています。独自に提唱される理論や、便宜上独自に開発された用語については必ず「独自である」旨を明記しています。なので、既存の音楽理論をリスペクトしつつ、現代のポップスの実情を踏まえ、さらに「作曲する」という目的から逸脱することのないように設計された、「現在進行形かつ現場実践重視の理論である」とお考えください。

僕も子供の頃から一応クラシック音楽をやってきて、ピアノを長年弾きつつ、いわゆるクラシックの譜面をベースにした考え方を中途半端ながら学んではきました。その中で感じていた違和感や、自分が大好きな音楽の中に出てくる説明のつかない快感みたいなものを、解き明かしたいという気持ちがありました。それが全てかなったわけではありませんが、SoundQuestさんのポリシーは、そういった僕の気持ちからしても納得のいく内容になっているので、おすすめです。

上記がサイトの入り口ですが、特に自由派音楽理論とは、という面について重点的に解説されているページはこちら

soundquest.jp


好きなところからつまみ食いで読むだけでも、「なるほどこれは良いことを言っている」とか「なんだ、こんなシンプルなことだったのか」という発見がいろいろあるのではないかと思います。

あと最後にもうひとつこのサイトの素晴らしい点を捕捉すると、「和声(コード)の理論だけでなく、メロディー、そしてリズムの理論をわかりやすくまとめていること」は本当に素晴らしく秀逸な点であると思います。音楽理論について語ります、解説しますといいながら、そのじつ「コード理論の表面だけ」をなぞったコンテンツのいかに多いことか。でも音楽本質はメロディーであり、さらにいえばリズムにこそ根元がありますよね?そこをストレートにとらえて、普遍的な内容にまとめていることは本当に尊敬に値します。

というわけで、はやくあったかくならないかな、と思いながら、お部屋でごろごろ(スマホからでも)ぜひ一度パラパラめくっていただければと思います。

おすすめです!

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「アレンジャーの負担が大きすぎる」それって本当!?

こんばんは、作曲家のペンギンスです。

ありがたいことに並行していくつもご依頼、ご要望の締め切りを抱えております。じゃあブログ書くヒマあったら制作進めろよという話ではあるのですが笑、前回の「ディレクションってなんだろう、と改めて考える」が反響が大きかったので、ちょっと作業の合間に書いてみます。今回も、作家仲間の方からいただいた質問に対する回答という形式になります。

質問:

コーライト仲間から「アレンジャーの負担が大きすぎる気がする」という意見が出ました。それに関してご意見うかがえないでしょうか。

回答:

もしかしたら、コーライトを経験したことがある方から僕への質問・相談の中で、これが一番多い質問かもしれません。アレンジャーという言葉はトラックメーカーと言い換えてもよいでしょう。
対比するのは「トップライナー」。これはFD(ファーストデモ)と呼ばれるメロディーとコードのシンプルなデモを作ることで曲づくりの骨格をデザインする人ですね。旧来型の言葉でいうと、アレンジャー・トラックメーカーが「編曲」、トップライナーが「作曲」をするひとという感じです。
つまり、作曲よりも編曲のほうが大変そうで、申し訳ない、フェアではない感じがするという意図の質問かと思います。

この質問は多分トップライナー・アレンジャー両方から出てくる質問だと思うので、それぞれの立場にむけて回答します。

ざっくりいうと

「アレンジャーさん、あなたの負担は確かに大きいですが、効率化にトライしていますか。目的を意識して質の高い判断を下せるようになれば、仕事は速くなり、同時にクオリティーもあがりますよ。トップライナーも質の高い判断を連続してくださなければならず、思考量としては同じかそれ以上に大変ですよ」

いっぽうで

「トップライナーさん、あなたの仕事はそんなに楽なものでもないはずですよ。アレンジャーの負担が大きすぎるのではなく、あなたの負担が軽すぎるのではありませんか。作業を巻き取れと言っているのではありません。アレンジャーががんばってアレンジするのに見合う、本当にクオリティーの高い、価値あるFDを作れていますか」

といったところになります。

はい、僕がトップライナーなので、若干トップライナーに厳しいです笑

J-POPは洋楽と比べて展開が多く、楽器数、トラック数も多く、キメなどがあるためアレンジは複雑です。洋楽のようにかっこいいビート一発でその上にラップが乗って・・・という感じだと、ビートをかっこよく作れたら終わり、というある意味トラックのクリエイティビティ一発なところもあるわけですが、J-POPにおけるアレンジャーはどうしても純粋に作業としてみたときの労働量、拘束時間が作曲家と比べて比較的長くなるのは事実です。アニソンとか、特にそうですよね。
しかし、それでもなおアレンジャーの仕事が「いつもかならず高負担で作曲家より大変である」とは限りません。そもそもアレンジャーはアレンジごと採用になれば固定金額のギャラをもらえますし、努力を積み上げただけ成果が出やすい職種であると個人的には思っています。
いっぽうのトップライナーも、「いつもかならずアレンジャーより楽チンである、短い時間で大丈夫」なわけがないですよね?そもそもJ-POPにおいて、正直言って採用を決める要素の過半はトップライン(歌詞、メロ、全体の流れ)であると思っています。つまり、トップライナーって責任重大なんです。トップラインのミスは、トラックメーカーではリカバリできません。トラックメーカーの労力が報われるかどうかはトップライン次第なのです。それって、大変な仕事のはず、いろいろ試行錯誤して、時間を費やす時だってきっとありますよね。

 

なので、もしアレンジャーばかりが大変な思いをしているコーライトがあるとしたら、それはお互いにとってとても不幸なことだと思います。

 

「なんか自信ないけど、とりあえずメロとコードを書いて、トラックメーカーさんに投げたら、あとはサウンド的なことでそこそこかっこよくなるんじゃないか」と心のどこかで思っていませんか?断言しますが、絶対そんなことはないです。

 

トラックメーカーは、トップライナーの曲を完成させる手伝いをしているのではありません。それはコーライトではないし、だったらお金(アレンジ料)を払って手伝ってもらうのが筋です。コーライトなのだから、対等のクリエイター同士、お互いにお互いを必要としたい、ですよね!

トップライナーは曲の方向性を決定づける良いメロディー、的を得た着実なコード進行、時には一発でヒットを生み出すキラーな歌詞などを通じて、曲の「普遍的な価値」を高めていく。そしてトラックメーカーはメロディーの意図するところをしっかり汲み取って、メロディーが映えるようなリズムアレンジをしつつ、今の時代に合った、クライアントに受け入れられる曲にするためにサウンドやミックスの流行をしっかり押さえて「今ココで使える曲」に仕上げていく・・・そうやってお互いに協力しあって「お前、なかなかやるな」「そっちこそ」というナイスなチームワークを発揮することが、とても大切だと思います。

もちろん、ここに書いたことはFDからスタートする「メロディー先行型」のコーライトに限らず、トラックメーカーの作ったトラックからスタートする「トラック先行型」でも同じことが言えます。トラックメーカーが出発点を作るのは確かですが、先行するトラックという条件を活かしつつ、最大限に魅力的なメロディーをのせ「最終的なゴールに確実に到達させる」というのはとても大切なトップライナーの仕事です。

トップライナーがアレンジャーに気後れしたり、アレンジャーがトップライナーのフォローで疲弊したりするのは、健全なコーライトではないですよね。ひとりひとりが自分の長所をみがいて、他の人の長所と混ざり合ってケミストリーが生まれる。そんなコーライトのお誘いを是非まっています。