「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

メロディーの音域について

 こんばんは、作曲家のペンギンスです。更新さぼってすいません。ミックスチェック待ちながら書いてます。

 ちょっと、そんなにレベルの高い話じゃなくて恐縮なんですがメロディーの音域について。
 我々職業作曲家の場合、アイドルの○○をターゲットに、とかソロシンガーの○○に向けて、といった感じで曲を書くわけですが、その時に必ず考慮しなければいけないのがタイトルの「メロディーの音域」です。まず当然ながらその曲を歌うターゲットアーティストは男性か、女性か?によって歌える音域が異なってくることはどなたでもご想像できるかと思います。さらに同じ性別でも高いところまで出る人もいればかなり低めのところに限界値がある方もいます(今回のブログでは細かい具体例を議論するのが目的ではないので音名は記載しません)。
 で、作曲家として常に悩ましいのが「どこまで音域を広く使っていいのかの判断」です。とりわけ曲が派手に聴こえやすい高音域は、どんどん高いところまで使いたくなるのが人情。ただし本人が歌えない歌になっては意味がないから、どこまで高音を使えるのかの判断が大事になってくるわけですね。
 そんなとき判断の基準になるのが多くの場合過去のリリース曲です。「この曲でこの音まで地声で出せてるから大丈夫だろう」といった具合に、過去にここまで高音を出している、というご本人の歌声があれば確かに安心ですよね。
 ただ本当に忘れてはいけないのが「その音が出せる」と「その音が余裕で出せる」には大きな違いがあるということです。メロディーの都合上とあるシングルのサビの終わりで一瞬だけ頑張って出した音を、普段からあらゆる曲のメロディーで多用されたらシンガーはたまったものではありません。一瞬だけ頑張れば出せる「最大瞬間風速の音」と、常に安定して出せる「最大(平均)風速の音」はだいぶ差があることがほとんどです。過去作を聴いて「あ、ここまで出せてる曲あるよかったー」と判断するのは簡単ですが、そうではなくてそのアーティストの作品を何曲も聴いて「この辺がおいしい音域、そのちょっと上が最大風速、さらに上のこの音が最大瞬間風速」という風に3段階で判断できるとよいですね。

・おいしい音域
・普通に出せる上限
・過去最高に高い音

これらはまったくの別物で、作曲するときには「おいしい音域」を一番いいところで活用しつつ、基本は普通に出せる上限までに収めるようにキーを設定する。そのうえでどうしてもメロディー的にここに行かなきゃ絶対ダメ、という場合だけ、過去最高に高い音までトライすることも検討する・・・という感じで判断することが必要かと思います。
 ただし、書いていて思うのですがやっぱりこれって「歌わずにDAWで作曲してる作家の弱点」でもあります。男女問わずシンガーソングライター出身の作家の方はこのあたり当然のこととして会得しているので、自分とは異なる性のシンガーに曲を書いても音域問題を起こすことはほとんどないよな、というのがたくさんコーライトしてきての実感です。作曲すればするほど、「結局歌えるヤツが強いし歌える曲が強い」という当たり前の事を強く思うようになりました。
 ちなみにさらに応用編な話としては、だからこそシンガーソングライターの曲は音域に関して保守的になりがちな面もあります。アーティストとコーライトしていると「あなたいつもこの辺の音域で曲書いてるけど、絶対もっと高いところまで出るし、そのほうが曲も良くなると思うよ?」ということがかなりあります。そこで客観的な作家の目線として、どういうコミュニケーションでベストな音域のメロディーが生まれるようにライティングセッションをもっていくか。というのは最近の課題でもあります。
 ながながと書いてしまいましたがこのへんで。まだミックスがこない。ちょっと寝ます・・・。