「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

インディー・ミュージシャンに是非とも「タワー・クリエイティブ・アカデミー」を紹介したい

 こんにちは、作曲家のペンギンスです。ボカロP時代から10年にわたって使い続けている僕の鉄板ネタに鶏肉を食べてるときに「ともぐいなう」ってツイートするというのがあるんですが、最近ついに炊飯器にとりむね肉と調味料を入れて米を炊いたらシンガポールチキンライスが簡単に作れることを知りました。夜中にひとりでジントニックと一緒にたべようと思います。酒が進みそうで楽しみです。以前コーライトおやつの企画が好評だったので、そのうちコーライト飯とか言い出したらこいつまたやってるよとご笑覧ください。


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 さて、最近は引き続き色々な作家さんと自宅スタジオや会議室やリハスタでライティングセッションしたりという感じなのですが、改めてアーティストコーライトがとても楽しいです。それってなぜだろう?という話から始めたいと思います。

 これは日本だけの話なのか、海外もそうなのかはわかりませんが、実はポップスの作曲家の仕事って随分前から「いわゆるミュージシャンの音楽活動のイメージ」とはかなりかけ離れた実態になっているんですね・・・。
 たぶん音楽業界にいない方には、作曲家のパブリックイメージとして「グランドピアノをつま弾きながら譜面にメロディーを書き進めて行く」あるいは「楽器を演奏したり、歌ったりしながら皆でワイワイと話し合って音楽を作って行く」といった風景がまだ思い浮かぶと思うんですね。でも実際には作曲という作業はかなり孤独な「非ミュージシャン的スタイル」になっているんです。ノートPCに最小限の機材を繋いで、ヘッドフォンしながら終日自宅のベッドルームでSNSをチラ見しながらカタカタとデータを入力しているという、なんなら音が出てなかったらフリーランスのシステムエンジニアさんの仕事風景と何一つ変わらない感じ。それが2010年代の職業作曲家のリアルな風景でした。(僕もシステムエンジニアだったのでその職業を批判する意図はないです)
 実際にやってみるとわかるのですが、どんどん自分が音楽を作っているという体感のようなものが薄れてきます。だから人と会って音を出しながら曲を作る、なんなら同じ釜の飯を食いながら作る、というライティングセッションやコーライティングセッションが普及したのは、理屈じゃなくて快感原則として痛いほどわかります。家でひとりで曲作ってたら鬱になってしまいそうです。
 それと同様に、これまで職業作曲家という「村」のなかで作られてきた商業ポップスの世界にバンド形態のアーティストやシンガーソングライターとのコーライトが持ち込まれたのも必然の成り行きと言えるでしょう。結局いい曲を作るための方法論を突き詰めていくと「歌っていて楽しい」とか「踊れる」とか「ステージ映えする」といった音楽の現場のワクワク感が大切だというのは変わらない結論です。それらをふまえた曲でないとたとえアイドルグループの楽曲であっても採用されないのが2010年代のリアルだなと感じています。部屋でひとりで悶々と作ってるストック曲より、真鶴でワイワイいいながら(同時に高いプロ意識を持って)作られたアーティストとの書き下ろしコーライト曲のほうが、音楽としての熱量が違うってのは、なんとなくわかりますよね?
 その延長線上で今日の本題に入ります。
 そこでいま日本の音楽シーンに求められてるのは「インディで個性豊かな音楽を作っているアーティストが、職業作曲家として商業音楽シーンに刺激的なヒット曲を送り出すためのコーライティング」だと思うんですね。それを実現するための場をあのタワーレコードさんが作ったということで、気になるのでシェアすることにしました。

tower.jp

 その名も「タワー・クリエイティブ・アカデミー」ということで、タワレコさんの名前を冠したところに本気度が伺えます。僕も今でも時折渋谷のタワレコさん本店でフロアを回りながら新譜チェックとかしてますが、10代のころからタワレコさんの店頭でどれだけ多くのことを学んだことでしょう。そのタワレコさんもフィジカルパッケージ時代の終焉と共に色々苦労されたことと思いますが、今ではシーンの中心でコーライティングの普及のために講座を開催するということで、感慨深いです。
 やっぱりタワレコさんがやるというところに意味があって、「色々な音楽に触れる場としてのCDショップ」「インディシーンに欠かせないプロモーションの場」といったこれまでの信頼と実績があるタワレコさんだからこそ、コマーシャルな音楽とかセミナー的なものに興味がないインディ・アーティストの方にも受け入れられたら良いなぁ、なんて思っています。
 ぼくもボカロP出身の職業作曲家として、自分なりの個性的なポジションを作曲家業界に確立したいと思っていますので、同じようにインディーな精神をもった職業作曲家の仲間がこれを機にたくさん増えることが、とても楽しみです。