「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

シンガーひとりひとりの「母音ぐせ」をみきわめよう!

こんにちは、作曲家のペンギンスです。

今日は、歌のディレクションについてのお話です。

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仮歌さん、あるいはコーライトチームのシンガーなどにトップラインを歌ってもらったけど、なんとなく歌のイメージが思っていたのと違う、なんてことありますよね。

 

やっかいなのが、(自分がシンガーでないと特に)イメージ通りのボーカルテイクと目の前のボーカルテイクが「違っているのはわかるけど、どう違っているのかはわからない」というケース。

 

「なんとなく違う」しか言えないようではディレクションできないし、「明るく」とか「元気良く」とか言ってみるものの、そんな情緒だけの話でもないような気がする。。。となる時ないでしょうか。

そんな時には、「このシンガーの『母音ぐせ』はどうなっているか?」を考えてみるとよいと思います。

 

「母音ぐせ」というのは僕が勝手に作った造語です。これは、シンガーによって口の中の形が異なり、口を開けたときの開き方にも個人差があるため、同じ歌詞を同じメロディーで歌っても、同じ発音にはならない、という事を指しています。そして僕の経験上、とりわけ子音ではなく、母音が顕著にクセが出るなと感じています。より正確に言うと子音にもきっとクセはあるんですけど、母音で出るクセって結構クリティカルというか、メロディーの印象を変えてしまったり歌詞が聞き取れなくなったりする原因になるな?と思っています。

 

実際の例でいうと、たとえば良くあるのが「全体的に母音が、うっすらと「e」に引っ張られている」というパターン。

 

例)Official髭男dism「Pretender」なら、

 

きーみーのー うんめいのーひとーーはぼーーくじゃないーーー

 

という歌詞を、「eの母音ぐせ」があるシンガーがもしカバーしたら、注意しないと

 

けーめーねー えんめーねーひてーーえべーーけじぇねえーーー

 

という風に歌うクセがあるって事なんですよ。

 

いかがでしょう?

「ああ!あの時、なんか歌入れがうまくいかなかったけど、言われてみればあの違和感ってそういう事か!」と思い当たる節がある方もいるのではないでしょうか?

 

こんな時の僕の対処法ですが、必ず「そのまんまのことを伝える」ようにしています。つまり「歌はうまいし、雰囲気は良い感じなんだけど、全体的に母音がクセなのか、eの音に引っ張られて、エ行の音ばかりに聴こえるから、歌詞が届かない。もう少し母音を意識して、歌詞の言葉が正確に伝わるように注意しながら歌ってみて欲しい」ということですね。

これを曖昧にして「口を開いて歌う」とか「言葉を大切にして」とか伝えても、もしかしたらそのときはうまく行くかもしれないけど、本質的に何が起きてるかをシンガーに伝えられてないので、次からもきっとまた「母音ぐせ」が出て、eのクセならまたエ行連発みたいに聴こえるテイクになっちゃうので、歌う本人のためにも正確に伝えてあげることが必要だなと思います。

 

ボーカルを観念論や精神論でなく、なおかつお互いに気持ちよくディレクションできるように、まだまだ修行の日々だなと痛感しています。