「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

事前に全部公開します!1/23開催「YOASOBI、藤井風・・・サブスクヒットから見る「未来のJPOP理論」」教材ページ【後半】

こんにちは、作曲家のペンギンスです。

-はじめに-

本日のブログ記事は、1月23日に開催するオンラインセミナー「YOASOBI、藤井風・・・サブスクヒットから見る「未来のJPOP理論」-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズ   Vol.6-」の事前公開教材です。

既にお申し込み頂いた方は当日の受講までにこのページをご一読頂いてから参加してください。スムーズに内容が理解でき、また事前に質問をまとめるなどセミナーを有効活用できると思います。

またこのブログ記事を読んでためになった!こう言う記事を待っていた!という方はおそらく1/23の当セミナーを受講いただきますと非常に有意義と思いますので、以下のPeatixサイトから是非お申し込みをご検討いただければと思います。

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YOASOBI、藤井風・・・サブスクヒットから見る「未来のJPOP理論」
-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズVol.6-
https://penguins-tips-vol6.peatix.com/

-本文-

前半の記事では、コードがマイナー進行なのにメジャーのメロディーが乗ることなど、現代のJPOPの特徴的な要素をピックアップしてご紹介しました。後半では、引き続き様々な楽曲を紹介しつつ、リズムやモードといった新たな切り口からも学んでいきたいと思います。

TIPS7「未来のJ-POPのリズム(譜割り)〜裏拍で「終わる」フレーズの余韻」

YOASOBIと並び人気を博すネット系アーティストyamaの「春を告げる」も大ヒットしましたね。この曲からはリズムを学んでみたいと思います。といってもトラックのリズムではなく、メロディーのリズム、つまりいわゆる「譜割り」ですね。音楽理論といったとき、多くの人がコードに偏重してしまいます。メロディーについて考えるとき、多くの人が音程に注目しすぎてしまいます。メロディーの、それも音程ではなくリズムに注目する人はなぜか少ない。でも、そこにこそ重要な真実があるのではないでしょうか。

そしてメロディーについて考えるとき、つい作曲時は「メロディーのはじまり(冒頭部)」に意識を集中してしまいがちですが、真にメロディーの印象を決定づけるのは実はメロディーのおわり(フレーズ終端部)ではないでしょうか?「春を告げる」のメロディーの最大の特徴は、これまで説明してきた現代J-POPのコードワークももちろんそうですが(典型的な「丸サ=丸の内サディスティック進行」ですしね)、メロディーの終わり方にあるといえます。メロディーおわり、目につく箇所がことごとく8分、あるいは16分の裏拍で終わっているのです。

さらに全体の流れのコントロールとして、Bメロだけは例外的に頭拍を強調しているのもポイントですね。

このようにメロディーのリズムにおいても、現代的なJ-POPは進化を遂げているといえるでしょう。

TIPS8「Key=CにおけるF音、G#音等での「エモさのコントロール」が重要」

YOASOBIからさらにもう1曲、「群青」です。この曲もリズムを見ると「知らず知らず隠してた」のところなど、シンコペーションしながらウラ拍を意識したフレージングになっているのにお気づきでしょうか。さらに(Key=Cで表記した場合)ペンタトニックを軸にもつダイアトニックスケールを基本としながら、時折ペンタトニックではない(ダイアトニックではあるけど)F音、さらにダイアトニックからも外れ「あえて」「ちゃんとマイナーする」G#音を使う瞬間も登場します。このあたりのバランスにペンギンスは坂本龍一「戦場のメリークリスマス」の幻影を感じてしまうのですが、脈々と息づく「ナイーヴなペンタトニックだけに収まらない現代日本の音楽表現」の一端といえるでしょう。

TIPS9「革新派だけじゃない。現代における伝統の守り手、あいみょん。」

これまでみてきたYOASOBI等の「現代的J-POP」があふれる中にあって、チャートでひとり伝統の守り手ともいえる活躍ぶりをみせるアーティストがあいみょんです。「裸の心」をみると、Key=CにおけるF音、C音の用法にやはり「ほっとする」気持ちを持つリスナーは多いのではないでしょうか。リズム面でもメロディーのアクセントが表拍にくる、くる!笑 拍頭にしっかり重心をおいたメロディーは、伝統的なコード進行とメロディーの調和とあいまってたいへん安心感を与えます。ちょっと拍頭に重心を極端に置いているきらいもあり、これは「恋」をはじめとする星野源の作品群もそうですが、ここまで頭拍だとかえって現代的という不思議な感覚もありますね。余談ですがペンギンスとしてはミックス(特に、あいみょんの声の)が非常にスマートで現代的な点に注目しています。ソングライティングがオーセンティック(伝統的)なことを、ミックスでバランスをとっているという仮説もありえます。

TIPS10「未来のJPOPはこれだ!コードのフラットを無視する」

miletのシングル「Ordinary Days」のAメロ、「奇跡のような」のところで、Key=CでいうとコードがB♭のところに思いっきりメロディーが「ドシラシド(CBABC)」と2回もBが登場し、コードの構成音のB♭を完全に無視して半音でぶつかってきます。これは凄い・・・!これはまだ「現代JPOP」では禁じ手といえる新しさで、未来の形がついに現れた瞬間といえるかもしれません。このような「半音でぶつかることをアヴォイドと考えない」というスタイルは、もちろんぶつかり方にもよりますが今後さらに増えていくものと思われます。いやぁ、ドキドキしますね。

TIPS11「未来のJPOPの参考に〜フリジアンモードが登場するKPOP」

未来のJPOPの断片はJPOPの中に限らず、もちろん今世界中を席巻しているKPOPのなかにも姿をあらわしています。たとえばBLACKPINKの「How You Like That」等に顕著ですが、わかりやすくトラックにもトップライン(メロディー)にもモード(旋法)を活用するものが増えています。ここではモードとは、という細かい説明は省略しますが、このような「エキゾチックな音階感覚を与える、西洋音楽でレギュラー的に使われない音階」のことをとりたててモードと呼ぶ場合が(実務上は)多いですね。この曲の場合はトラップブームで大流行した「フリジアンモード」が全面的に打ち出されて、強烈な個性を出してます。

TIPS12「JPOPの未来のさらなる一例、フリジアンを活用した最新ヒット例」

今日の終着点であり、未来の予告編となる楽曲。Ado「踊」です。強烈なフリジアンモードですが、不思議とJPOPと調和しています。ゴスロリ的価値観、ヤンキー的世界観とフリジアンは不思議と相性がよく、今後21世紀の日本のヒット曲でじわじわと浸透していく可能性があるなと思っています。

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いかがだったでしょうか。後半での学びをまとめておきます。

・メロディーのリズム(譜割り)で裏拍を意識することで現代的なリズムになる

・コードとのアヴォイドを恐れず、同時にコードに寄り添うエモいアプローチも取り入れる。

・フリジアンをはじめとするモード的なアプローチの楽曲が未来のヒントになる


といったところでしょうか。

今回はかなり理論的な内容が多く、当日は質問も多数でることが予想されます。お申し込みをされた方には事前課題をお渡ししますので、そちらに是非取り組んでいただくことで、今回提示した「未来のJPOP理論」(といっても一端ですが)に少しでも興味、知的好奇心が掻き立てられる方が増えたとしたらこのうえない喜びです。

ではまた当日、1月23日にお会いしましょう!