「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

事前に全部公開します!9/18開催「あなたの曲の可能性を広げる12のコードワーク」教材ページ【前半】

こんにちは、作曲家のペンギンスです。

-はじめに-

本日のブログ記事は、以下のとおり9月18日に開催するオンラインセミナー「あなたの曲の可能性を広げる12のコードワーク-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズ Vol.3-」の事前公開教材となっております。

既にお申し込み頂いた方は当日の受講までにこのページをご一読頂いてから参加されますと、スムーズに内容が理解でき、また事前に質問点をまとめるなどセミナーを有効に活用できるかと思います。

またこのブログ記事を読んでためになった!こう言う記事を待っていた!という方はおそらく9/18の当セミナーを受講いただきますと非常に有意義な価値を提供できると思いますので、以下のPeatixサイトから是非お申し込みをご検討いただければと思います。

↓↓↓当ブログ記事が事前公開教材となっているセミナーはこちら!↓↓↓
「あなたの曲の可能性を広げる12のコードワーク」
-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズVol.3-

https://penguins-tips-vol3.peatix.com/

-本文-

今回お伝えしたいのは、コードワークについてのお話です。といっても「ふーん」という方が多いのではないでしょうか。それもそのはず、今や書籍やwebでコードワーク(コード進行、和声理論etc)と呼ばれるものは多数紹介されています。YouTubeなどにはわかりやすいコードワークの解説動画がたくさんあります。特定のコード進行や、コード全体の理論についての説明はそれらに譲ります。今回ここでお伝えしたいのは、「あなたの曲の可能性を広げる」コードワークとはなんだろう?ということです。

誰もが音楽をはじめる時、特定のアーティストに憧れたり、特定のジャンルを好きになったりします。そして意識的にも無意識的にも、自分が生まれ育った国や、世代に大きな影響を受けています。実はこういった背景によって、みなさんひとりひとりのコードワークは、無意識のうちに影響を受けているのです。自分では、自由にコードワークを選んでいるつもりが、自分の世代、出身地、趣味によって、大きく制約を受けている、ということです。

だとすれば、もしもコードワークというものを客観的に見ることができれば、いわばそういった制約から自由になれる翼を手に入れるようなものです。というわけで、今日は「古今東西のさまざまなコードワークを客観的に比べてみて、自分のコードワークの癖を知り、コードワークの「大きな仲間わけ」を知り、自分の曲のコードワークを客観的にコントロールすることで、自分のコードワークの可能性を広げる」・・・そんなことを目標にしていけたらと思います。

今回もTIPS形式でお届けします。12のコードワークをTIPSとしてまとめました。12個は単体ではなく、2個セットになっています。そして、J-POPとグローバルポップを比較するスタイルとしました。似ているコード進行、時には全く同じコード進行であっても、J-POPでの活用されかたとグローバルポップでの活用されかたは驚くほどちがいます。そこを感じていただくことが大きな曲作りのヒントになると思います。

前置きが長くなってしまったのでいきましょう!

なお、今回の講座では、全ての参考曲のkeyをCに移調して表記しています。これは度数表記(I,II,IIIなどトニックからの相対的な度数で表記する方法)よりも見やすく、かつ原曲のkeyで表記するよりも構造を抽象化しやすいためです。

TIPS1「Am-F-C-G」
参考曲「WITHOUT YOU」The Kid LAROI

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まずは昨年(2020年)のグローバル・ヒットから。アコースティックギターの弾き語りに近いシンプルなアレンジで、しかもKeyがC/Amなので非常にわかりやすい例です。Am-F-C-Gという、マイナーのトニック(主音)のコードから始まるよくあるコードワークです。後半がC-Gとなっている点と、コードチェンジがゆったり(1小節ごと)している点を覚えておいてください。次の曲と比べてみましょう。

TIPS2「Am-F-G-C」
参考曲「Get Wild」TM NETWORK

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一気にタイムマシンで時代を遡り笑、1987年の日本のヒット曲に。こちらはTIPS1と同じでAm-Fから始まりますが、後半、C-GではなくG-Cと進行します。GからCへの流れは、いわゆるカデンツ進行(起立、礼、着席)の「礼→着席」のくだりと一緒で、非常に音楽を一方向に向かって進める強い「重力」を感じさせます。これをドミナント・モーションといいます(正確にはG7-C)。また、TIPS1ではコードチェンジがゆったり(1小節ごと)でしたが、この曲ではコードチェンジが2拍ごと(急)になっています。このような、ドミナント・モーションと頻繁なコードチェンジがJ-POPらしさを作っているといってよいでしょう。

TIPS3「C-G-Am-Em」
参考曲「Basket Case」GREEN DAY

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もう一度グローバルヒットに戻ります。90年代のパンクロックを代表するGreen Dayです。パンクロックらしいシンプルなコード進行ですが、ここでもコードの順序に注目してください。CからG、AmからEmです。ドミナントモーションとは反対の動きをしていることに注目してください。

TIPS4「C-Em-Am-Gm7(-C7)」
参考曲「ヘビーローテーション」AKB48

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そしてこちらが、J-POPの中のJ-POP、ザ・日本スタイルの究極といえるAKB48の大ヒット曲です。こちらではEm-Am、あるいはGm7に注目してください。Em-Amというマイナーのドミナント・モーションに近いものが登場します(正確にはE7-Amですが、同じEからの動きをしているという意味)。そしてGm7ですが、原曲ではGm7-Fと進行していくのですが、音楽理論的にはGm7-C7-Fという動きの省略形と解釈してみると、ここに「ツーファイブ」と呼ばれる非常に古典的なコードワークがあることがわかります。

ツーファイブ、というのはツーは2、ファイブは5なので、2-5ということですね。これは冒頭に申し上げた度数表記(I,II,IIIなどトニックからの相対的な度数で表記する方法)で2(Key=CでいうとDm7)から5(Key=CでいうとG7)に行くということなんですが、その先でかなりの頻度で5から1(Key=Cでいうと、もちろんC)に行く進行です。手短にいうと、ツーファイブは実は、ドミナント・モーションの仲間なんです。つまり!これまた音楽の重力を感じさせる進行なわけです。

J-POPのど真ん中だったAKB48が、音楽の重力であるドミナント・モーションとツー・ファイブに忠実である・・・このことを覚えておいてください。

TIPS5「C-G(onB)-Am-C(onG)-F-C(onE)-F-F(onG)」
参考曲「Permission to Dance」BTS

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そしてこちらも、代表的なコード進行のひとつです。先ほどから説明している「音楽の重力」をつくる「ドミナント・モーション」の行き先、つまり「音楽の重心」である「トニック」。これはKey=CだとするとC、つまりKeyの音をそのままコードにしたものですね。そこから順に下がっていくコード進行です。これは基本的には極めてJ-POP的なコード進行なのですが、たいへん珍しいことに最新(2021)のグローバル・ヒットの中に見つけることができました。それがEd Sheeranが提供したこちらのBTS「Permission to Dance」です。Cから下がっていく感じは日本人にとって懐かしい歌謡感がありつつも、コードチェンジのタイミングを感じてみてください。

TIPS6「C-G(onB)-Am-Em(onG)-F-C(onE)-Dm7-G」
参考曲「負けないで」ZARD

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さて、トニックから順に下がっていく進行といえば、J-POPの名曲「負けないで」をださないわけにはいきません。しかし、一聴してさきほどの「Permission to Dance」とはまったく雰囲気が違いますね。なぜでしょうか?理由をふたつあげたいと思います。
ひとつは、コードチェンジのタイミング、というかコードチェンジとリズムアレンジの関係です。BTS「Permission to Dance」では2拍ずつコードチェンジしていきますが、コードチェンジの前に8分音符ひとつのビートがあります。口でいうと「じゃん、じゃーじゃん、じゃーじゃん」という感じ。ビートに揺らぎがついている感じがして、グルーヴィーですね。
それに対してZARD「負けないで」は完全にスクエアで、さらにスネアが頭打ちになった状態で同じ2拍単位のコードチェンジ。メロディーも4分音符中心で非常にスクエア。なのでグルーヴィーな音楽というよりはロックのフィーリングが強いですね。これだけで同じトニックから順次下降する進行でも、まったく違う印象になります。
さらに、2つ目の違いとして、コード進行の終わり方が違います。Permission to Danceでは

「C-G(onB)-Am-C(onG)-F-C(onE)-F-F(onG)」

と、最後の2つ、Fで下降をやめて上昇に転じるのに対して、ZARD「負けないで」は

「C-G(onB)-Am-Em(onG)-F-C(onE)-Dm7-G

と、、、おっと出ました、「ツーファイブ」ですね。J-POPらしくしっかりツーファイブで折り返すことで、ドミナント・モーションが強調されています。そう、全体的な傾向として「J-POPのほうが、グローバルポップと比べて、ドミナント・モーションを強調する、ドミナント・モーションを利用する傾向が強い」ということが言えます。

いかがだったでしょうか。ここで軽く前半での学びをまとめておきますね。

・コードワークにおいては、コード進行だけでなく、コードチェンジのタイミングも重要
・コードワークの冒頭が注目されがちだが、本当に曲の雰囲気を作るのは終わり方
・G7からCに戻る力「ドミナント・モーション」など、音楽には重力がある。

という感じですね。とくに3つ目はめっちゃめっちゃ大事です。体操選手が三半規管でバランスを取るように、音楽家は三半規管でコードワークのバランスをとるのです。音楽には重力があります。それに比較的従う(J-POP系)のであれ比較的自由になる(グローバルポップ系)であれ、まずは重力を理解しないといけません。重力があるからこそ鳥も跳べます。自由になるためにも、重力があることを知りましょう。


後半も、これらのことを頭におきながら読み進めてみてください!
それでは後半でまた、お会いしましょう。