こんばんは、作曲家のペンギンスです。しばらく「コーライティングの教科書」の紹介シリーズが続きましたが、久々に通常回です。以前どんなテーマでブログが読みたいかということで、タイトル候補をいくつか挙げたときに、意外とみなさんから興味を持っていただけたので、このタイトルでやります。
最近、口癖があります。「事実」です。嫌な口癖ですね(笑)。大体使用例としては「それは事実なんですか?」「事実はどうなってるんですか」「じゃあ、そういう事実があるんですね?あれ、おかしいな、それを反証する事実がありますよ?」といった感じで使います。嫌な奴ですね(笑)。ものすごい疑ってます。相手を否定しているわけではありません。相手の話を否定しているわけでもありません。ただ、確認しているだけです。「それは事実なのか?」
そのノートはアヴォイドだから避けましょう
この案件、絶対決まりますよ
仮歌って大事ですよね
仮歌は適当に入れておけばいいと思います
XXさんは最近忙しいからなぁ・・・
このコンペシートに書かれてることは守らなくていいですよ
コンペシートに沿うことがプロとしての責任でしょう?
このアーティストって、いつも暗い曲だから、マイナーで行きましょう
タイアップ内容から察するに、クラブミュージックじゃないとダメだな
インパクトを付けるためには、歌詞のストーリーを重視しよう
タイトルは、最初にリスナーを引きつけるファーストメッセージ
このグループはバンド系禁止だから、生音はNGっすよ
サビの最初でフレーズを繰り返すことで、聴き手に印象を残せる
→それは事実なのか?
(ちなみに「俺は絶対そうだと信じてる!」という内容と
「んなわけねーだろ!」という内容をわざと混ぜてますw)
「ふーん」で聴き流せば、どれもそれなりに説得力がありそうな意見であり、情報です。でも、ちょっと待ってください。この中にどれだけ「事実」がありますか?事実ではなくて単なる「意見」や「感想」が混ざってませんか?
誤解しないでほしいのですが、別に「意見」や「感想」が「事実」より劣っているなどということはありえません。それどころか音楽は最終的に聴くひとの主観的な感想、感情が動いたかどうかという点だけが大事なので、事実としてどう、などという観点から考えること自体にほとんど意味がないのです。
それでも、なお。「事実」は大して重要じゃないけれど、「事実じゃないこと」を「事実」だと思い込んで行動することの害は確かにあります。「ぜんぜん事実じゃないただの意見」を、「あくまで私の意見なんだけど」と断って口にするのであればとても貴重な意見になるのですが、「これこれこうだから、こうしないとねー」とまるで何かあらかじめ決められたルールがあるかのようにしゃべってしまうと、コーライティングの中での楽曲の可能性をひとつところに(それも、あまりクリエイティブでないところに)閉じ込めてしまう気がするなと最近思っています。事実じゃない、ただの直感的な意見だって、とっても大事で、必要です。でも、その元になる事実が、思い込みではだめなのです。
事実(FACT)なのか意見(OPINION)なのかを区別して話すことで、「ここは事実、ここは、あくまで推測」と切り分けて考えることができるようになれば、コンペやコーライティングセッションなどでも、生産的な時間の使い方、ひいてはクライアントの意図を正しく汲み取った楽曲の完成が望めると思います。