「年間100曲」ペンギンスのコーライトな日々

コーライティング(Co-Writing)で年間100曲を完成させ、職業作曲家としてメジャーアーティストに楽曲提供しているペンギンスが、毎日のコーライティングで想うことを書いてます。

事前に全部公開します!7/31開催「コンペで決まる!再生数が伸びる!あなたの曲をキャッチーにする12の方法-」教材ページ【後半】

こんにちは、作曲家のペンギンスです。
今日も前回にひきつづき、曲をキャッチーにする12の方法についてお伝えしていきたいと思います!

前回のブログはこちら!

-はじめに-

本日のブログ記事は、以下のとおり7月31日に開催するオンラインセミナー「コンペで決まる!再生数が伸びる!あなたの曲をキャッチーにする12の方法-CWF presents ペンギンスTIPSシリーズ Vol.1-」の事前公開教材となっております。

既にお申し込み頂いた方は当日の受講までにこのページをご一読頂いてから参加されますと、スムーズに内容が理解でき、また事前に質問点をまとめるなどセミナーを有効に活用できるかと思います。

またこのブログ記事を読んでためになった!こう言う記事を待っていた!という方はおそらく7/31の当セミナーを受講いただきますと非常に有意義な価値を提供できると思いますので、以下のPeatixサイトから是非お申し込みをご検討いただければと思います。

↓↓↓当ブログ記事が事前公開教材となっているセミナーはこちら!↓↓↓

penguins-tips-vol1.peatix.com



それでは後半戦、いってみましょう!!
心のこもった楽曲を、より多くの人に伝わりやすいものとするための、具体的な手法。みていきましょう。

TIPS7「メロディーの始め方-休符、頭拍、アウフタクトを使い分ける-」


ex)欅坂46「二人セゾン」

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後半最初はこれです。僕も長い年月にわたり「作曲ノウハウ本」の類を読んだりしてきましたが、このTIPSに関しては、けっこう多くの識者の方が指摘している有名なTIPSなのでご存知の方も多いかもしれません。メロディーというのは、息を吸って歌い出し、息つぎが必要になる箇所までつづく。いわばメロディーは呼吸です。そのメロディーが、音楽の区切りである「小節線」からみたとき、どの位置からはじまるか、というのが、メロディーの種類わけとしてかなり有効なんですね。

具体的には、

1・休符からはじまる。
2・小節線ちょうどからはじまる
3・小節線より前からはじまる(アウフタクト)

と、まぁ考えてみれば場合分けでこの3つしかありえないんですがw、この3パターンがありますよね。

この中で、とりわけ単体でキャッチーさを生み出す効果があるとされているのが3番のアウフタクトです。サビというクライマックスに、文字通り「前のめり」で突っ込んでいく効果をもたらすこのアウフタクトは、ヒット曲のサビ入りタイミングで多用されてきました。

例としてあげた欅坂46「二人セゾン」は、このTIPS7の理想的な模範例といえるでしょう。Aメロは休符からはじまり、Bメロは小節線ちょうどからはじまり、サビは「二人セゾン〜」とタイトルが乗るアウフタクトではじまる。全体の流れも綺麗で、本当に模範的な作曲であると感じます。

TIPS8「音程の跳躍」


ex)Ado「うっせえわ」

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キャッチーでない、伝わりづらい音楽とは、変化に乏しい音楽とも言えます。ここまでのブログ記事も、メロディー、リズム、構成・・・すべて「変化をつけるためにどうすればよいか」という説明をしてきたといってよいでしょう。

音楽の中にある変化でやはり最大のものといえるのが「音程の変化=跳躍」でしょう。それもちょっと上がったり下がったりするだけでなく、丸ごと1オクターブ跳躍して上がるようなメロディーだったら、非常に強い印象を残すことができます。

例にあげた「うっせぇわ」はこの「音程跳躍」というキャッチーさの例として、ほぼ完璧です。最新のJ-POPヒットからのエビデンスであり、音程はこれ以上は基本難しい1オクターブの跳躍、しかもサビ頭で、1度ならず3回も跳躍します。そこに「うっせぇ うっせぇ うっせぇわ」という超強烈な歌詞が乗りそれがタイトルになっている。説明不要のキャッチーさ、賛否両論ありつつも、多くの人に届くメロディーとなったことは事実でしょう。

TIPS9「コードに対するメロディの関係性-最大の武器を使いこなそう-」


ex)MONGOL800「あなたに」

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ex)Czecho No Republic「Firework」

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TIPS9は、メロディーだけでなく、コード(和音)進行だけでなく、その両方の相互関係にこそキャッチーさが宿るとするものです。私はこの件について語るだけでブログまるまる1記事、いや、ブログをひとつ新規運営できるくらいに語りたいことがあるのですが、それを熱く語るには紙幅が足りませんので、ここではあくまでTIPSに落とし込んだものにします。

TIPS9をひとことでまとめると「コードとメロディーの関係性は、1・メロディーの多くがコードのトライアド(三和音)に含まれているような場合と、もうひとつ、2・メロディーの重要な箇所がコードに対してテンションノートになっている場合の2つに大きくわけられる」ということです。コードとメロディーの関係を、協力的・補完的なものととらえるか、反対に対象的・対立的なものととらえるか。どちらが良い・悪いというわけではなく、表現したい内容に応じて上手に使い分けることで、曲が伝わりやすくなる=キャッチーになる、というわけですね。

例にあげたモンゴル800「あなたに」では、サビ冒頭「あーなーたーにー」のところで、「シーレーソーミー」というメロディーに対して「G-D-Em-C」というコード進行。全てのメロディーの構成音が、対応するコードのトライアド(三和音)に含まれています。このことが極めて力強く、シンプルな印象を与えることに成功しています。

いっぽうでCzecho No Republic「Firework」ではサビ冒頭「Oh Firework」のところで「ラーラーミファ#ー」というメロディーに対して「Bm7-Gmaj7」というコード進行。メロディーはコードに対して、セブンス(7th、七度)の関係を維持しています。この、浮遊感!オシャレさ、切なさ、を与えるには、このメロ、このコード、どちらかひとつではだめで、メロとコードの関係性に着目する必要があります。

 

TIPS10「ブレイク・キメ-飛び道具ではなく、普段使いができるようになろう-」


ex)Survivor「Eye of the Tiger」イントロ

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キャッチーさについて多くを語ってきましたが、この「ブレイク・キメ」というのは、特にJ-POPを作るうえで欠かせないものです。ブレイクとは曲中でリズムが止まったりすること、キメというのは曲中でそれまでのリズムパターンに急に変化がついて展開の節目となることをさします。いずれも古典的な音楽の手法ですが、ヒップホップ以降の、ループミュージックを主体とする世界の音楽の流行の中では、近年比較的「古いやりかた」「反復的なダンスミュージックにそぐわない、野暮ったいもの」とされているように思います。それも一理あって、たとえば完全なヒップホップなどでやるべきことではないと思いますが、いまだにJ-POPの世界では、肝心な盛り上がりの箇所でこの「ブレイク・キメ」を使えるかどうかは、曲がキャッチーになるかどうかの大きな分かれ目だと思います。

例にあげたのは洋楽ですが、以上のような理由から少し古いものになります。このSurvivor「Eye of the Tiger」は映画「ロッキー」に使われ大ヒットしましたが、この曲に代表される70-80'sのポップスは、洋邦問わず「ブレイク・キメの名作の宝庫」です。現在のJ-POPを作曲するにあたり、下手すると最新のグローバルヒットよりも示唆に富んでいることは大いにありえますので、参考になると思います。

 

TIPS11「音を重ねていくペース配分、ミュート等で緩急をつける」


ex)Official髭男dism「Pretender」

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これまで多くのTIPSはメロディーライティングに関するものでしたが、アレンジの全体像に関してもキャッチーさを生み出す要素があります。それがこの音を重ねていくペース配分です。

とりわけJ-POPにおいて、「アレンジでどれだけの楽器数を重ねるか」というのは、洗練された洋楽的なアレンジが増えてきた今日においても、なお大きな課題です。ヒラ歌(Aメロ、Bメロ)でどこまで楽器数を減らし、シンプルな良さを伝えられるか。一転してサビ(chorus)で、どこまで楽器数を盛り盛りにして、派手にできるか。両方のスキルが問われます。これを実現することで、「音量、音数、楽器数で『ここがサビである、重要である』というメッセージを伝える」ということができるようになります。

例としてあげたOfficial髭男dismの「Pretender」は近年まれにみるオーソドックスかつ華やかなポップ・バラードですが、Aメロでの音数の少なさから、Bメロでリズムに変化をつけつつ少しずつ音を増やしていき、サビで一気に華やかになるという見事な構造です。

なお、この「アレンジでどれだけの楽器数を重ねるか」というテーマに「ボーカル」も含めることで、よりこのTIPSを普遍的なものとしてとらえることができます。グローバルヒットは近年、音数を増やすなどという手法はほとんど取られなくなっていますが、それでもいわゆるサビにあたるchorusパートになると、ボーカルの本数を増やし、バックグラウンドボーカル(いわゆるハモリ)や、時にはリバーブ等をフル活用して派手さを出します。楽器の数だけでなく、ボーカルの本数や処理による緩急も重要なのです。そういえば洋楽でサビをchorusパートを呼ぶのは、まさにボーカルを重ねることで華やかさを出すという世界共通の手法がうかがい知れる面白い呼び名ですね。

TIPS12「歌詞でキャッチーにすることもできる」


ついに最後のTIPSになりました。音楽家、とりわけ非シンガーにとって、極めて見落としがちなTIPSです。それは「歌詞でキャッチーにすることもできる」ということ。裏返すと「歌詞で失敗したら、これまでのTIPSのすべてを上手く活用していてもキャッチーにはならない」ということです。

歌詞でのキャッチーさは、その手法があまりにも多岐にわたり、なおかつ「正反対のやり方でキャッチーさを出すことができる」世界でもあるので、あえて参考楽曲の例示はしません。それでも・・・

1.ビッグワード(誰もが知っている言葉)を、重要な箇所で使用、または連呼
2.誰も知らない言葉を使う(単語の発掘)、時には新しい言葉を作り出す(造語)
3.体言止め、倒置法といった「古典以来の文章スキルを歌詞でも活用する」
4.話しかける、手紙を書く、といった「コミュニケーションスタイル」を活用

などなど、いくらでも例が出せますが、歌詞でキャッチーにする(耳目を集める)ことは非常に重要です。

またこれまでにたくさんあげてきたメロディーに関するTIPSも、「それを歌詞で裏付ける、歌詞でサポートする」ことで効果は飛躍的に増大します。 たとえばTIPS7で紹介した「アウフタクト」の部分に、歌詞で「グッバイ」という誰でも知っている言葉を使い、そしてそこでTIPS10で紹介した「ブレイク」で楽器をなくす。これによってTIPS11で紹介した「Pretender」のサビの鮮烈な導入を実現することができます。

さいごに 

いかがでしたでしょうか。改めてお伝えしたいのは、これは「あなたの音楽の精神を捨てさり、魂を置き去りにする行為ではない」ということです。逆です。「あなたの音楽の精神をより多くの人に伝え、より多くの人に魂が届くようにする行為」です。あなたの音楽にふさわしいTIPSだけを取り入れればよいし、あなたの音楽を壊すようなTIPSは取り入れてはいけません。1曲1曲、似合うTIPSと似合わないTIPSがあります。コンペで勝ちたい。インディーアーティストとして、サブスクでの配信数を伸ばしたい。ソロクリエイターとして動画の再生数を増やしたい。さまざまな方の、さまざまな音楽上のニーズがあります。

それぞれのご判断で、ふさわしいTIPSをふさわしいタイミングで活用して、キャッチーな音楽を作ってください。そのことが皆様の音楽、ひいては毎日を少しでも楽しくしてくれるものになれば最高です。